7/1の長崎新聞郷土文芸欄に「第58回佐世保短歌祭」の結果が掲載されていました。読みやすいように活字にしました。

 佐世保短歌連盟(吉岡正孝会長)主催、佐世保アルカスSASEBO。全投稿数123首。互選。会場には県内外から約50人が参加。

市長賞

★和鋏の失せてひと夏 けふ夫の釣り針なほす手に見つけたり 佐世保・松永蒔江


市議会議長賞

★功もなく名もなくされど恙なく職終えし子の労をねぎらう 佐世保・森本弘子


長崎新聞社賞

★百グラム六百円の肉を買ひ再診の無事ひとり祝へり 佐世保・荒木保江


日本歌人クラブ賞】 

★大国に拒否権といふ宝刀のありて平和はつねに置き去り 東彼杵・林 直孝


県文芸協会賞】 

★恩寵のごとき五月のひかり降る四季の分からぬ母の窓にも 長崎・岩間郁子


佐世保文化協会賞

★ホトケノザ畑の隅に広がりぬあら草なれどよき名もらいし 佐々・柴山与志朗


NCC長崎文化放送賞

★並びなき美文字の友の賀状にも乱れのみえて愛しさつのる 佐世保・出ロスミ子


TVSテレビ佐世保賞】 

★席譲りし婦人に気づき学生がまた席を立つ窓に春色 佐世保・萩原裕子


五足の靴記念賞】 

★早起きの友の吊りしかドアノブに朝日色した金柑の袋 佐世保・鶴丸たか子


佐世保短歌連盟会長賞

★さりげなく補い合える両の手のごとく暮らしてゆかむあなたと 鹿児島・岩下麻理子


佐世保短歌連盟賞】(13首) 

★先行きを悩むはよそう婆ふたり鞦韆をこぐ春の日溜り 佐世保・弓削久美子

★食される運命と知らぬシロウオの春が来たぞとピチピチはしゃぐ 川棚・斉藤敬子

★緞帳が下がりはじめた実感に賀状じまいの文字を末尾に 佐世保・田中村男

★とおき日の八百屋肉屋の「毎度あり〜」セルフレジせし空耳に聴く 佐世保・山根信子 

★被災地の募金に千円札あまた不況の市民の善意をみたり 佐世保・小田美恵子

★ひき抜かれ転びていても春を知り空向き咲けりだいこんの花 五島・村崎美智子

★あと三十年長生きしてねと励ますはデザイナーへの夢持つ七歳 佐世保・松尾綾子

★再会の叶わぬ人らに賀状書くせめて心に留めおかむと 佐世保・上西悠史

★この空き地に建っていたのは何だろう記憶を辿る雨の夕暮れ 佐世保・山口ゆかり 

★自死なせる子よ石蕗の花灯り還ってほしい幻でいい 松浦・岩佐幸子 

★なぜ聞かぬなぜに届かぬジレンマをテレビへ叫ぶ核の廃絶 大村・六田正英 

★あの角を曲がるときっと待っている我が家の庭の沈丁花の香 東京・重松清文 

★K君の鉛筆わたしが削るのと取合いをせし友よ元気か 佐世保・西ふじ代


 また、同連盟が公募していた2023年度の年度賞(20首)と新人賞(10首)の受賞者も決まった。


年度賞】「今際のさくら」 岩間郁子 長崎市

年度賞奨励賞】「ゴボウの香り」 岩下麻理子 鹿児島県

新人賞】「生きてゆけそう」山根信子 佐世保市

新人賞奨励賞】「メジロ」 森田英基 静岡県


 入賞者の皆さん、おめでとうございました。