6/29NHKラジオ文芸選評(俳句)、兼題「蟻」、選者は藤井あかりさん。

(↑俳人協会「俳句文学館」より)

今回紹介された藤井あかりさんの作品 ↓


★短夜へ精油一滴垂らしけり

★青葉騒栞の少し前から読む

★婚約ののちの照り降り水葵

★消灯ののちの小さき春灯(入院時)

★癒えてきし日々を翡翠遡る

★我の子が傷つけし子の夏帽子(息子さん5歳。今はその子と仲良しだそうです)


◎入選作品


★朝刊を広ぐや蟻の這うてゐし(兵庫県 水越久哉さん)


★太陽を弾いていたる蟻の尻(神奈川県 山田知明さん)


★早退や渡り廊下の蟻の列(福岡県 栗皮さん)


★進路希望調査の紙を夜の蟻(熊本県 夏風かをるさん)


★商談の眼は黒蟻を追うてゐる(千葉県  清瀬朱磨さん 66)

 ↑ 藤井あかりさんのイチオシ作品。


★蟻塚に倦みてライオン撮つてゐる(神奈川県 花瀬 玲さん)


★長崎は影の濃き街蟻の道(長崎県 相川正敏さん 67)

 ※石井かおるさん選。


★ふらふらと蟻入り込むシューホール(長野県 藤 雪陽さん 39)

 ※シューホールは靴紐を通す穴。


★包まれたティッシュに蟻は雲の中(北海道 八田昌代さん 54)


★水盤に蟻がいるまだ生きている(熊本県 夏雨ちやさん)


★蟻死して悲しむ間無し蟻の列(千葉県 永田くみ子さん 70)


★蟻潰す鉄幹の背のうすきかな(奈良県 若林明良さん 49)

 ※与謝野鉄幹の不振時代のエピソードにこういうのがあるそうです。


★日雇ひを終へて働く蟻を見る(埼玉県 伊藤映雪さん)


★飛石の一つに蟻の百集り(秋田県 赤尾てるぐさん)


★蟻に追はれてゐる蟻が蟻を追ふ(宮城県 赤間 学さん)


★風景が動くと見れば蟻一匹(広島県 シマタクさん 61)


※上の藤井あかりさんのプロフィールより。(2015年6月10日時点)


1980年、神奈川県生まれ。2008年「椋」入会、石田郷子に師事。2010年、第1回椋年間賞受賞。2015年、第5回北斗賞受賞。俳人協会会員。(句集『封緘』より)


句集『封緘』自選15句↓


★己が手のふと恐ろしき焚火かな

★柿落葉大切になる前に捨つ

★逆行の人と話せる枯野かな 

★打ち明けてしまへば枯菊の軽さ

★我がものになるまで見つめ藪柑子 

★言の葉は水漬いてゆく葉冬の鳥

★距離おくといふこと水仙を隔て 

★二本の裸木のありわかりあふ 

★窓に凭りいつしか春の雨に凭り

★唇も桜も乾きはじめたる

★青梅や傘畳むとは人悼む

★空蟬をもとのところに戻せざる

★脱ぎきたる靴の遥けき裸足かな

★向日葵を切断面と思ひゐる

★握り潰せる無花果を剝きてをり


※来週(7月6日)は短歌、テーマは「スプーン」、選者は川野里子さん。締め切りは7月1日(月)午後11時59分。