俳句ポスト 兼題「薄暑」の回の結果発表。水曜日【佳作】(中級者以上)

手を鳴らす方へ鳴く竜夕薄暑 TAKO焼子

パタパタと扇ぐ薄暑の象の耳 杉柳才

石段の十段辺りより薄暑 そうり

貝がらの縞が波うちだす薄暑 古瀬まさあき

鬣の柔き薄暑の木馬かな 山本先生

コンビニへ点滴引いてゆく薄暑 広島じょーかーず

保護知らす防災無線夕薄暑 ひなた和佳

メコン滔々濁り聖なる薄暑かな 幸田柝の音

辞めた身に海芝浦の夕薄暑 黒澤墨青

休憩終え被る着ぐるみ街薄暑 島 白椿


五線紙は音の鳥かご薄暑光 仁和田 永

お向かひの鸚哥あづかる薄暑かな 明惟久里

窓際や薄暑の未決箱に山 木ぼこやしき

鉛筆の匂ふ薄暑の美術室 三月兎

倒壊のままならぬまま薄暑かな 錆田水遊

酒屋より相撲聞こゆる夕薄暑 いかちゃん

薄暑光水に刃物の匂いする かん かんし

上京の父待つ銀座夕薄暑 宮武濱女

夕薄暑昼間の花は小さく閉づ 渡海灯子

鍋が三十個家じまいの薄暑 やまさきゆみ


舟宿の三和土を抜ける風薄暑 妄児

馬乳酒の薄暑の桶にたぷんかな トポル

歩道まで漁網の積まれたる薄暑 染井つぐみ

かるかんを食みて薄暑の桜島 みやま千樹

夕薄暑カート散らばる駐車場 だっく

鴉に顔覚えられたる薄暑かな 中山月波

田の失せて田の神祀る薄暑かな 黒木九

一階が潰れたままの家薄暑 横山雑煮

さみしいから爆心地に風と薄暑 入口弘徳

売犬の目やにひとすじ夕薄暑 公木正


苔の香の仄か薄暑の羅漢像 晴田そわか

ヒーローの塗装の剥げや街薄暑 富佐野ほろよい

傷痕の隆起の赤き薄暑かな いさな歌鈴

手拭いに故郷の屋号あり薄暑 クラウド坂の上

江ノ電や波が羽化する薄暑光 葦屋蛙城

船でゆく道頓堀の薄暑かな 西村小市

迷ひ来しプラハの路地や薄暑光 acorn

薄暑光帆は耳であり肺であり 元野おぺら

迸る水蛇口より能登薄暑 HNKAGA

地下鉄や薄暑の灰汁が混ざる風 染野まさこ


子の服の野生を濯ぐ夕薄暑 イサク

次々と薄暑に溜まりゆく献花 ギル

納骨を終えて薄暑のバスを待つ 小池令香