俳句ポスト 兼題「薄暑」の回の結果発表。月曜日【類想コメント】(中級者以上)


【類想コメント(by.夏井先生)】

◆季語の本意の確認

 「薄暑」とは、初夏の時候の季語。歩いたりするとほのかに汗ばむ頃。歳時記の解説の「汗ばむ」を早とちりして、単純な「暑さ」と捉えたと思われる句がちらほらありました。 「薄暑」とは、一年の中では最も過ごしやすい気持ちのよい五月あたりの気候だということを押さえておきましょう。

◆「薄暑」は三音の季語ですから、下五に置く場合「薄暑かな」と、ついつい詠嘆したくなります。が、この場合の注意事項が一つ。中七が、終止形が切れてからの、下五「薄暑かな」は、調べが滞ってしまいます。この辺りの工夫を。

◆類想

 ■イメージ→・明るい まばゆい・気持ち良い すがすがしい・軽やか 活動的・色なら白や緑 青(蒼)

 ■気温が高くなるので→・半袖になる 腕まくりをする 薄着になる・上着を脱ぐ 脱いだり着たり・足元はサンダル スニーカー・冷たい飲み物(ビールや炭酸系)・自販機の飲み物が変わる(温から冷へ)・夏らしい涼やかな食べ物(素麺など)→逆にスパイシーなカレーなども人気・大変 坂道 階段・重い 背中の子 荷物・お風呂をぬるめにする・窓を開けて風を入れる

 ■活動的になる→・散歩 外出 お出かけ 旅行・仕事帰りについつい寄り道(で一杯……)・軽やかに自転車を漕ぐ サドルは高く・子供ははしゃぐ 川や海辺で遊ぶ・庭の手入れ 草むしり・畑仕事

 ■日差し→・日陰 木陰を選ぶ・日傘をさすようになる・洗濯物は風にひるがえる よく乾く

 ■この時は→・草木の緑が美しい 〇〇の芽が出る など(季重なり注意)・学校や職場に慣れてきた頃・二の腕がまだ白い(日焼けしてない)・着るものに悩む・そろそろ夏支度→衣替え ガラスの器 髪を短くする

 ■負のイメージも→・亡き人を偲ぶ 身内 友人・葬儀 通夜 墓参り・病気 怪我など

 ■その他→・地下街を出れば薄暑 トンネルを抜けて薄暑・坂が急 道が遠い・薄暑の街の賑わい・〇〇が匂う→体臭や髪の香 風の香 木々の香 街の香 食べ物の香 などなど・〇〇(服や風など)が絡みつく 纏いつく 張り付く・スカートの裾やスカーフなどが風にひるがえる

◆類想として意外だったのは、「猫」ネタと、「爪を切る」ネタが多かったこと。「薄暑」からどういう発想で「猫」や「爪」に辿り着くのだろうと、少々首を傾げました(笑)。

◆以下、類想句の一覧より。

バス待ちの風ここち良き薄暑かな 於大純

バリウムの喉に張り付く薄暑かな GONZA

風通る木陰探して薄暑かな 風花

街中は薄暑たのしき買物す 紋舞蘭

スニーカー新しくして薄暑かな 鈴木由花子

菜園で一日過ごす薄暑かな まりい木ノ芽

父の手を引いて薄暑の九段坂 小圷冬扇

草寄せて庭師いっぷく薄暑かな kikuti-aya

川岸に集ふ若人夕薄暑 紅 珊瑚

陽に染まる瀬戸内の島夕薄暑 竹内ユキ

足早に薄暑の街行く営業マン 田中ようちゃん

小走りの半襟にある薄暑かな とりゆふ

ふる里へ続くレールに薄暑光 ひと粒の種

※今回の兼題「薄暑」中級者以上投句欄への投句は、投句数4604句、投句人数1683人。