6/22西日本新聞「ながさき読者文芸」

◎俳壇 籏先四十三選

★代掻きを終へて今宵の水明り 諫早 田中道信

★夜を照らす母なる月よ合歓の花 壱岐 甲原裕子

★酒蔵に残る太梁五月闇 西海 楠本シヲリ

★薫風を胸いつぱいに一両車 佐世保 馬場定水

★戸隠の杉の木立の青時雨 長崎 松尾利惠

★梅雨冷えの向う脛より忍び寄り 佐世保 川原豊子

★父の日や戦争の事聴きたりず 大村 松永喜美子

★隠れの島けぶる卯の花腐しかな 佐世保 相川正敏

★夏服の少女のうなじ風撫づる 佐世保 牛飼水鳥

★旧友は酒屋の娘鱧の皮 平戸 田地 花

★海山の幸と新茶と並ぶ市 佐世保 牟田一彦

★一心に研ぎし鎌持ち草刈女 南島原 松浦せつこ

★もぐ枇杷の一つ一つに陽の香り 諫早 篠崎清明

★夏帯をしめて小屋入り詣でかな 長崎 成瀬至楽

★六月の瓶の鳴き砂泣きもせず 佐世保 森 誠

★あけすけな話も今日の草刈女 対馬 神宮斉之


◎歌壇 黒田邦子選

★被爆三世三人を生み育てたり影響なきかと案じながらも 壱岐 町田典子 

★おもちゃ屋で泣く児を諭す母親の言葉聞こえて心なごみぬ 佐世保 小山雅義

★哲学も持たずこれまで生きて来たその付けなるか貧乏暮らし 平戸 古川敏郎

★生き抜きて力尽きたる蜘蛛置けば蟻たち運ぶ柩のごとく 平戸 森 久美子

★道端にたわわ色づく枇杷あれど下校の子らは振り向きもせず 諫早 平松 茂

★命乗せまっすぐ島へ早朝に海を越え行くドクターヘリは 大村 溝田吉大

★昼餉にはおにぎり一つとロールパン二日に一度飽きることなし 諫早 麻生勝行

★やめるはずだった今年の米づくり朝から並ぶ育苗箱が 西海 田中加代子

★ご先祖にせめての草刈り・溝浚へ荒れ田にひとり泥にまみるる 佐笹保 鶴田竹一

★ふと顔を上げて見入る夜半の月遠く住む娘とつながっている 諫早 花岡壽子


◎諧句 川田金太郎選

★ジジババの栄養剤は孫動画 南島原 末吉貴浩

★川下り連なってゆくドンコ舟 南島原 北御門チヨ

★梅雨晴れ間蝶が飛び交う庭の中 諫早 前田良子

★合い言葉長生きしよう喜寿の会 長崎 溝口健治

★新緑に誘われ和む散歩道 長崎 堤 貴美子

★街角の折り鶴飾る地蔵様 長崎 道本暲江

★いつの間に祖母に似てきた我の顔 佐世保 松崎伸苑

★被災地の力士頑張れ大相撲 佐世保 山田テル子

★遠き日の子らと遊んだおもちゃ達 佐世保 中島由美子

★嫌な事心の底に埋めて置く 松浦 前田サツキ

★梅雨入りのニュースに願う無災害 平戸 萩原博美

★母の日に白詰草の首飾り 壱岐 深見秀子

★次は喜寿誓い別れた古希の宴 南島原 板山良継

★廃村の朽ちゆく家に蛍くる 大村 串崎洋一

★繕えば繕うほどに波が立ち 佐世保 鶴田竹一


◎同ページに「海峡あじさい俳句大賞」の募集広告が載っていました。

海峡を彩るアジサイを俳句に


 北九州市の白野江植物公園と下関市の長府庭園は、両園に咲くアジサイや園の風景などをテーマにした「海峡あじさい俳句大賞」を共催し、投句をよびかけている。


✦締切 6月30日。

✦1人1句(未発表)。

✦両園内の投句用紙かはがきで。作品、氏名、住所、電話番号を記入して、両施設の窓口または郵送で。

✦はがきの送り先

◎長府庭園〒752-0986 下関市長府黒門東町8-11 083-246-4120

◎白野江植物公園 〒801-0802 北九州市門司区白野江2丁目

✦選者は、山口県立下関工科高等学校教諭内野聖子氏(句集「猫と薔薇」。「窓の会」会員、元「船団」会員、元「e船団」選者、俳句甲子園地方大会審査員、NHKBS「俳句王国」ほか各種メディア出演)

✦各賞

▽最優秀賞(1人)に図書カード1万円分

▽長府庭園賞と白野江植物公園賞(各1人)に同5千円分

▽菊舎顕彰会賞1名 (図書カード 3,000円分)

▽水無月賞10名(書籍「菊舎のおはなし」図書カード 500円分)

✦8月1日に両園のホームページで発表。

✦問い合わせ 白野江植物公園=093(341)8111、長府庭園=083(246)4120


内野聖子さんの俳句(坪内稔典さんのブログより)

★夏霧が山をまたいでやってくる

★線路わき白猫走る夏の草

★夏嵐洗いざらした髪で行く

★羊羹を丸ごと食べて夏稽古

★夏枯れて祈りのように水を遣る

 

「内野さんは、なぎなた部の顧問、高校のクラブ活動などで「夏稽古」という語が普通に使われているのかもしれない。ともあれ、羊羹を丸ごと食べるのはかなりな猛者だ。」(坪内稔典)


他に、

★冬大木直立不動整列す

★チョコレートはんぶん溶けて春の夜

★旅先でちいかわ買って春の風

★咲く時はわたしが決めるさくらさくら

★阿蘇五岳聞こえてくるよ春の歌

★春の駅会ってはならぬひとと会う

 など。