6/21山梨新報「しんぽう文芸」。山梨の句友、田辺義樹さん報。

◎俳壇 山田省吾選

★紫陽花や静かな雨の日となりぬ 富士吉田 青柳時子

★菖蒲田に影引き過るあずさ号 大月 小俣義人

★雲晴れて四方に眩しき夏の山 笛吹 石倉絹子

★みどり満つ妻の豆飯炊き上がる 甲府 中村 彰

★水盗むことも思ひ出老農夫 都留 前田智子

★綿羊の丸刈りの肌夏来たる 南アルプス 淡路茂美

★鮎料理尾ひれ跳ねあぐ化粧塩 大月 志村忠義

★八ケ岳よりの風渡り来る芒種かな 甲府 村松幸治

★夏服や昨日と違ふ子らの顔 甲府 日向鏡子

★武蔵野の城下貫く麦の風 都留 松沢節子

★雲梯の少年はしゃぐ若葉風 甲斐 松田健嗣

★冷し酒父と交はせし日の遠く 甲府 遠藤武文


◎柳壇 坂田よし江選

★繋がりを今日も感じるご挨拶 甲府 田口節子

★尾瀬の字を見る度浮かぶ水芭蕉 中央 鶴田和彦

★気遣ってくれる娘がいる母の幸 甲府 小沢春美

★雨風に耐えペダル踏む通学 群馬 高橋 空

★八十路まだ髪結いの技光ってる 笛吹 向山敏子

★花水木ふんわりゆれる風の道 甲府 丸山洋子

★生き返る富士山頂の深呼吸 中央 志田末男


◎歌壇 祢津達子 選

★露草も都忘れも去年の場に咲き揃う庭夫と巡る 甲府 丸山洋子

    【評より】露草と都忘れが定位置に咲いた…作者の草花への思い、ご夫妻の睦まじさが伝わる。

★紫陽花の二輪を切りて厨辺に活けて爽やか今朝の食卓 甲府 遠藤俊子

★消毒をせねば虫つく花芙蓉無事の新芽に妻の微笑む 甲斐 松田健嗣

★千葉よりの帰省の従姉働き者姉さん被りで庭の草引く 南アルプス 大木利子

★駐車場上手くバックで停められて小さくこっそりガッツポーズを 富士吉田 田辺義樹

★麓から見わたす甲斐の山並みの日ごと明るむ新緑の色 甲府 高瀬孝人

★雨あがりローカル線の窓の外暫く続くみどりの植田 甲州 水上優子

★ブランコを漕いで見あげた青空に近づきたくて漕いだ幼日 富士吉田 中村 蓮 

★庭芝の中に出でくるカタバミは取れど取れども黄花を咲かす 甲府 櫻井 稔 

★餌台の雀にまじり鳩一羽細かな餌をせっせとひろう 大月 沢登かほる

★平日の夕刻楽しむ韓流ドラマ静に視てる老いたる二人 埼玉 所 富子

★子カマキリのみどり濃くなる五月末逞し姿雨に打たるも 甲府 小林 衛