6/17長崎新聞郷土文芸(4)「あわい」欄、「俳句はいま」。

◆「あわい」欄

※大村の菖蒲祭俳句大会については既に当ブログにてご報告済です。その他の「あわい」欄記事は以下の通りです。(一部編集しています)。

◎8月3日「第62回原爆忌文芸大会」ジュニア部門投句案内


◯趣旨「短歌、俳句、川柳を通して核廃絶と恒久平和を訴える」

◯NPO法人長崎国際文化協会(森拓二郎会長)主催

◯高校生以下が対象

◯8/3、長崎市茂里町のベネックス長崎ブリックホール

◯テーマ「友情 ・未来・希望・愛・原爆・平和」(俳句、短歌)

◯自作未発表作品、 1人1首または1句。

◯応募無料。

◯原稿用紙 に作品、学校学年、氏名を明記

◯締め切り=6月28日

◯送付先=〒850-0031、長崎市桜町1の12の3階、NPO法人長崎国際文化協会(電095-822-2366)


※一般の部の募集は締切終了。大会は当日午後1時開会。俳句と川柳については午前10時〜午後0時半に当日吟の投句を受け付ける。


◎あけぼの7月号(佐世保市のあけぼの短歌会)


年4回の歌誌。会員38人が日々の喜怒哀楽を詠み込んだ各8首を寄稿。 


★宝くじ外れし人がコツコツと靴をならして前向きにゆく(折原博子)

★街中を流るる水路に迷ひ来し緋鯉が真鯉に並びて泳ぐ(末吉英子)

★草は枯れ花や木も枯れそのあとをイノシシたちが遊ぶ里の家(高田久美子)

★しだれ梅の花がふんわり開く頃なぜか気づけり過去の失言(友廣ヒデヨ)

★柚子湯浴び充分生きたと納得も白寿まではと欲の深さよ(山ロシヅ子)

★裏庭にキジ降り立ちて息を止む華やかな羽根ひろげて見する(山本久子) など。


このほか、4月号の作品選評、エッセー7編を掲載。問い合わせは編集兼発行者の市瀬博文さん(電0956-49-3948)。


◎「歌の実」夏号(歌の実短歌会=編集本部・長崎市) 


◯巻頭に尾田貢さんが「戦争をしない国」と題した小文を寄せた。


今年元旦の能登半島地震をはじめ、近年の天災で多くの被災者が出たことを振り返りつつ、沖縄・辺野古の米軍基地建設や日英伊共同の戦闘機開発の動きに目を転じて、「戦争をしないと決めたわが国のやることだろうか。桜の花が咲いた。今年も世界から戦争は終わらない」と記す。


◯会員作品


★誕生日つねにも増して寝坊して餌付けの雀に起こされている(曽我部美千子)

★茶を飲んで饅頭一個食って待つ四十分で人は焼かれる(石川元治)

★金魚たち腹減ったろうに追いかけっこ水草みれば産卵の時季(長岡洋子)

★外海路を車走らせ見上げれば山本二三の描きし雲が(浅田洋子)

★吾が庭を餌場となしし猪よ夜の間だけは自由としょう(阿野恭子)

★勤務地の五島に帰る弟に手わたす土産は新刊マガジン(岩崎明日香) など。


問い合わせは曽我部さん(電095・843・0107)。


◎「六花」刊行(大村市の短歌グループ、六花の会=沖田秋徳代表)


会員8人がこの1年間に詠んだ作品の中から15首を自選して収載した。


★渋谷に来てスクランブルの交差点混み合ふ中を孫の袖持ち(池田元子)

★朝日受け郡の川のせせらぎは音に合はせてキラキラ光る(沖田秋徳)

★ちらちらと群竹洩るる白光り過ぎゆき見れば冬の満月(喜々津保則)

★休眠より覚めて命のエネルギーしっかり溜めて今萌えむとす(小谷由久子)

★ボラは跳ね亀はゆるりと泳 ぎ行き東屋涼し文月の午後松尾桂子)

★空しさは飲み込めばいい寂しさは慣れればいいと鏡見て言ふ(森田昭)

★厳寒に耐へしコデマリ新芽出づ啓蟄過ぎの穏やかなる日(吉本圭子)

★どの色が好きかと問はばためらはず我は答えむ命の緑(六田正英) など。


問い合わせは講師の六田さん(電0957-53-2810)。


◆「俳句はいま」 

若手の勝負、ベテランの芸「王国の名」「渦」など 浅川芳直

 詩は言葉との体力勝負。俳句の「芸」は年齢とともに磨かれるが、言葉の勢い、鮮度を保って勝負し続けることは難しい。80歳の俳人・坪内稔典は、随筆集「老いの俳句」(ウエップ)でこう吐露した。 

 今年、若い俳人の第1句集が続々と刊行されている。近年の若手は技術的に早熟な傾向を指摘されるが、技も含め「勝負」に出た意欲作ぞろいだ。


◯1979年生まれの常原拓の「王国の名」(青磁社)


 は、季題をラッピングする技で魅せる。俳句という箱の中に何と何を詰め合わせるか、センスが抜群だ。

★川涸れてちひさきものの声のして

★大粒の雨降りはじむ虚子忌かな

★鬼が鬼ふやす遊びや春を待つ

★さみだれに橋の名ひとつ忘れをり


 要素同士が連携し合い、一句に奥行きを生む。


◯90年生まれの鈴木総史の「氷湖いま」(ふらんす堂)


 は、二面性の発見が一つの型。

★陽炎より特急鈍く来たりけり

★森は陽をまづしく宿し鳥の恋


 光の中の重さや翳り。

★誰も褒めてくれぬあかるさ誘蛾灯

★まぶしくてうらやましくて風車


 景から叫びが露出する。序文で櫂未知子は、著者が周囲に比べ新人賞受賞が遅かったと気遣い「いずれ誰かがあな たの名を口々に叫ぶ日がくる」と書く。劣等感は言葉との勝負で重要な主題かもしれない。 


◯90年生まれの黒岩徳将の「渦」(港の人)


★剃刀がひきかへす喉揚羽蝶

★餅の杵振り上ぐるたび口開く

 など身体感覚で勝負するが、根底にある情念が作品を濃厚にしている。


★背中より弱火にせよと秋の暮

★書く前の手紙つめたし夕桜

 季題の質感ににじむ人恋しさ。


★翌る日の七夕竹の雨の粒

★風に首晒して雛を流しけり

 「の」の連続や「けり」で表現される細やかな情感に、心技体そろった充実を見る。


◯では、坪内稔典の第13句集「リスボンの窓」(ふらんす堂)はどうか。


★ついさっきホタルブクロを出た人か

★でこぽんとやりたいなんてなんてまあ

★ピカチュウとずっと友だち鳳仙花

 一見若いが、これはやはり長年口誦性(口馴染みの良さ)と片言性(意味伝達の不完全さ)を攻めてきた大家による練り上げ られた童心、円熟のお家芸。ベテランにしかできない「勝負」もまた魅力的だ。


浅川芳直さん=平成4年宮城県名取市生。平成10年「駒草」入門、現在同人。「むじな」発行人。宮城刑務所文芸誌「あをば」俳句選者。『河北新報』朝刊コラム「秀句の泉」水曜、土曜執筆者。