6/17長崎新聞郷土文芸(1)俳壇・歌壇・柳壇。

◎俳壇 前川弘明選

★夏めくや双眼鏡を買いに行く 佐世保 岡田明美

 (評)「夏めくや」を受ける下句の素知らぬ明るさが良い。双眼鏡が未来のときめきを期待させる。

★草笛や牧羊犬の息つよし 長崎 入口靖子 

 (評より)草原のたくましい香りの中で牧羊犬を誘導する草笛が響く。大気を蹴る犬の躍動。 

★古戦場白く濡らして夏の月 佐世保 相川正敏 

 (評より)かつて敵味方が命をかけて戦った戦場をただ白々と月の光がぬらす。

★石仏の眉根に潜む五月闇 西海 楠本シヲリ

★麦秋や僧快走のスクーター 長崎 三宅三智夫  

★ソーダ水モールス信号めきし泡 長崎 入口弘德

★万緑の句碑に流るる草書かな 諫早 野崎治行

★今日もまたちから授かり雲の峰 佐世保 倉本健治

★窓に来る守宮親しき独りの夜 五島 田中裕子

★手のひらの光を見つむ五月闇 西海 田川育枝

★今生を病みて八十路や山笑ふ 五島 川端とみ子

★五月雨の便り届きし法事かな 佐世保 松山茂則

【選者吟】夏来たる鳥獣天へ声上げよ


◎歌壇 寺井順一選

★迷いつつまたも断捨離中断す母が残した私の手紙 諫早 金子哲也

★色あせし結婚記念の置き時計苦楽の時を律儀に刻む 諫早 野崎治行

★奥山に戦没者墓地の草を取る百合のつぼみのお辞儀うけつつ 松浦 長谷智香江

★ふっくらと島のソラ豆しょう油味母のつくりし思い出の味 西海 深川好美

★山畑に背なを丸めて草を抜く朝のしじまにホトトギス鳴く 南島原 松永文則

 ※今日の長崎新聞の「ローカル」のページにこの松永文則さんの「戦争の記憶」が載っていました↓

★児にもどる母と湯の町露天風呂月は朧にやさしく包む 諫早 土井幸子

★「またきてね」笑顔にシールに握手まで見送る孫は気持ちをあらわす 五島 山下コト

★朝雨に散歩は無しと気づく犬窓際に伏す老いの顔して 佐世保 友廣ヒデヨ

★汁物を両手で吸えた嬉しさも覚めれば悲し麻痺の手を見る 大村 辻 利雄 

★五十年乗りし愛車に見切りつけ送迎つきのデイケアに通ふ 長崎 島崎日曻

★これからも人にやさしく生きなさい亡母(はは)の言葉を手繰る朧夜 佐世保 小山雅義

★ダイヤ婚迎えし夫は黄泉の国感謝をこめて在りし日偲ぶ 長崎 松本陽子

★ノーブラになりたい気分かも知れぬ梅雨めく空の雲の動きは 長崎 志方雅一

★川上に一礼をして深呼吸上から順に田の代を掻く 長崎 小島茂之

★香りよき新茶の試飲あちこちを巡って楽し早岐茶市は 佐世保 山崎ひとみ


◎柳壇 井上万歩選 題「頼る」

★バスが頼り地域の足を消さないで 長崎 吉永詩織

★面倒な書類提出子に頼る 長崎 横山秋子 

★ありがたいいつも頼れる仲間いる 大村 岩本ウメノ 

★何処へでも杖を頼りの旅行好き 長崎 辻 保雄

★お互いに頼り頼られもう米寿 長崎 松添春樹

★自衛隊に頼る被災地手を合わせ 長崎 中島まゆみ

★してもらうさせてもらっている感謝 長崎 森 昇 

★坂の町孤老が頼る近所の輪 長崎 三瀬則子 

★心強い頼れる娘そばに居る 長与 米澤隆子 

★霧の中レーダー頼る船の長 諫早 山西節夫 

★車椅子仲間に頼る登下校 長崎 岡 智英子

★頼られるうちがまだいい高齢者 佐世保 山本絹代 

★また値上げバイトに頼る苦学生 長崎 森本志真子 

★頼られて安否確認する近所 佐世保 鶴田竹一 

★ご近所に頼り頼られ母元気 長崎 穐山佳代子 


◎一面「きょうの一句」

◎あとのは次ページにまとめます。