6/15西日本新聞「ながさき読者文芸」

◎俳句 籏先四十三選

★一翼をダムにひろげて若楓 佐世保 小山雅義

★紙に滲む永字八法梅雨の夜 島原 坂本優美子

 【評より】書道に必要とされる基本技法は8種類あるが、全て漢字は「永」に含まれているという。

★幼児の一歩二歩へと風光る 大村 松永喜美子

★明日のこと知るすべもなく蓮の花 佐世保 川原田安子

★野仏の朱き前垂れさみだるる 西海 楠本シヲリ

★島になほ祈りの暮らし薄暑光 佐世保 相川正敏

★農道に水音あふる五月晴 壱岐 深見秀子

★群青の古りし花入れ光琳忌 長崎 松尾利惠

★父の日や共に帰還の人語る 諫早 田中道信

★父の日や父の俳句を仏壇に 南島原 田中よしみ

★五月闇車も灯火うるませて 諫早 碇 タキエ

★清貧を生きて八十路の目借時 佐世保 太田恵子

★子かまきり縁より上り今日の客 佐世保 川原豊子

★ダム底の村のやうなる梅雨入かな 佐世保 牛飼水鳥

★いちじくのもう熟れる頃生家跡 諫早 石田志帆

★海岸に市立ちほのと新茶の香 佐世保 牟田一彦


◎歌壇 安田博行選

★菜の花の香り巡りぬ目をとじて旅立つ君は後ふり向かず 佐世保 矢羽田妙子

 【評より】長いあいだ連れ添ってきた最愛のご主人が先立たれた…。

★この場所は不登校の子らの居場所だがいつか飛び出せ嵐の中 壱岐 町田典子

★床の間にやや古びたる母の琴鳴らしてみたり今日は母の忌 佐世保 小山雅義

★日帰りの墓参に里の古老らを訪いて語れば昭和にもどる 諫早 平松 茂 

★雨乞いの伝統継がむと打つ太鼓龍神祭りの今をもつづく 松浦 金子寿美

★田植え機を届けやりたし父母のもとへとタイムスリップさせて 西海 田中加代子

★夕暮れに草とりをする上空を機は子の住める東京へ飛ぶ 佐世保 松崎伸苑

★ナポリタンにタバスコ振ってむせ返るさういふとこまで父に似てくる 対馬 神宮斉之

★グランドをならす背番のない子らにひときわやさしく西陽の当たる 大村 溝田吉大


◎諧句 松下冨士子選

★肌寒い朝に野良猫集い合う 松浦 母袋トヨ子

★母の日を迎えた幸に感謝する 佐世保 矢羽田妙子

★夜明け前カラスの声に胸騒ぎ 佐世保 山田テル子

★亡き父の農具は今も生きている 大村 串崎洋一

★町おこし人を集める花菖蒲 大村 内田和代

★まだ喜寿の更に勉学いそしむ日 長崎 松尾利恵

★遠い日の旅よみがえるジャカランダ 長崎 林 浩子

★小屋入りに弾む心のくんち前 長崎 小浜 隆

★変わりない同じ暮らしの出来る幸 長崎 大枝翠峰