6/11毎日俳壇・歌壇。

(井上康明選)

★たんぽぽの黄に喝采のひびきあり 流山市 鶴田隆弘

 <評>黄色いタンポポが野原を埋め、一面に咲いているのだろう。その明るい黄色は、あたかも喝采しているかのようだ。 

★純白は亡き妻の色薔薇の花 富士市 後藤秋邑

★昼寝してゆくりなく逢ふ黄泉の母 川越市 大野宥之介

★噴水の押しつぶされしごと了はる 北本市 萩原行博

★この辺り昔は寺領きんぽうげ 和歌山 神野一馬

★梅落とす呼吸の合ひしいとこかな 山梨市 浅川青磁

(片山由美子選)

★牡丹の十二単の崩れけり 和歌山市 宮本啓子

★救急車停まる気配や旱星 愛知高橋一枝

 ※「旱星」=雨の無い、ひでり続きの夜に見える星。

★千年を咲いて今年の藤の花 町田市 枝澤聖文

 ※樹齢1,000年を超える藤が日本には数多くある。他の木に巻きつきながら日の当たる場所を求めてどんどん伸びる。

★青蔦やショパン流るる珈琲館 東京 徳原伸吉 

★ゆれ合ひてゆれを違へて芥子の花 平塚市 高橋佳代

★小満や窯入れを待つ皿百枚 松山市 村重香霞

 ※「小満(しょうまん)」=万物が次第に成長し天地に満ち始める頃。今年は5月20日。期間でいうと5月20日から6月4日。

★川床(ゆか)に来る南座よりの流れ客 高槻市 黒田豊子

 ※「川床」=川の流れに突き出して設けた、涼みのための桟敷あるいは床几。夏の季語。

ヴァイオリンうまき住職夏の月 佐世保市 相川正敏

(小川軽舟選)

★もつと光をもつともつとと若葉せる 大阪 芹澤由美

★行く末の不安を抱へ春惜む 塩釜市 高橋永喜 

★はつなつやピアノ歓喜の楽章へ 八王子市 井上幸子

(西村和子選)

★消ゆるたび増ゆると思ふ夕蛍 北本市 萩原行博②

★大琵琶の水の匂ひも梅雨まぢか 枚方市 門川清秀

★音楽の聴こえさうなるアマリリス 豊田市 松本 文

★かの世にも知り人多く花あふち 延岡市 九鬼 勉

★気がつけば岸まで遠き潮干狩り 土浦市 今泉準一

★這ひ上がりなほ這ひ上がる薔薇真白 尼崎市 森下久美子

(伊藤一彦選)

★相模湖をスワンボートでゆく我を底に眠った町が見ている 横浜市 谷口 菜月

 ※相模湖は、多目的ダムである相模ダムによって、相模川をせき止められて造られた人造湖。かつて勝浦地区という集落があった場所。

いつからかわからぬけれど品書きのようなりハラスメントのずらり 池田市 黒木淳子

(米川千嘉子選)

★本当に必要な物つくってる人は呼ばれずクリエーターと 座間市 高橋貴子

★こどもの日柱の傷のまた増えて築百年の梁の重さよ 島根 重親峡人

(加藤治郎選)

★じいさんの鷹の眉毛が羽ばたいて私に何かを訴えている 広島市 堀 真希

★ねえ私たちの木造アパートが遺跡となって地図に載ったよ 大津市 世田夏雪