◎俳壇 髙永久子選
★山間の棚田に一人田植かな 西海 森 篤
★潮騒を聞きつつごろ寝夏座敷 西海 原田 覺
★雨止みて若葉の山の立ち上がる 佐世保 相川正敏
(評)5月の木々の勢いは目を見張る。むせるような緑の山が雨を得て、また一段と空へ伸びる。
★薫風を御朱印帳の栞とす 長崎 入口弘德
★麦秋や少年を呼ぶ母の声 長崎 入口靖子
★部員みな丸刈りにして夏に入る 南島原 松永文則
★雨兆す芒種の土の匂ひかな 長崎 森 昇
※「芒種」=芒種の節。二十四節気の一つ。新暦で6月6日頃。今年は6月5日。稲や麦などの穀物の種蒔きをする頃という意味。
※私も「棘も我が個性芒種の禾(のぎ)たらむ」という句を作ったことがあります(2017/6)。
★班分けのバンダナは赤ピクニック 諫早 中島こゆき
★画板持つ児童の列や夏帽子 長崎 辻 耕平
★草笛の手ほどきやはり餓鬼大将 長崎 三宅三智夫
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★葉桜や部活の子らも一休み 松浦 永淵勝幸
★麦こがし少年の日の海の青 佐世保 森 誠
※「麦こがし」=麦を炒って焦がし粉に碾いたもの。砂糖を混ぜ水や湯を加えて練って食べる。落雁や饅頭など、和菓子の材料としても使われる。関西では「はったい」。
★緋目高や出窓は孫の目の高さ 西海 楠本シヲリ
★十字架に青の深さよ初夏の空 佐世保 西田治生
★一礼し上から下へ代を掻く 長崎 小島茂之
★浜昼顔水際までの細き道 長崎 成瀬至楽
★純白の沖の客船夏の夕 平戸 里崎久美子
★ビル街の路地裏夏の空晴れて 佐世保 松山茂則
★庭中に玉葱干して笑む翁 五島 田中裕子
★リハビリの真っ最中や二重虹 五島 松本隆司
【選者吟】千枚の札玄界灘へ渡唐祭
※「渡唐祭」=弘法大師は現在の長崎県平戸市田浦海岸から唐の長安をめざして遣唐使として船出した。ゆかりの聖地では報恩感謝と祈りをもって法要が行われる。平戸では船上より千枚地蔵札を流したりする。
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★一湾を狭くし山の上までも満つる家々過疎となりゆく 長崎 池辺文子
(評)年々斜面の空き家が増えていく長崎市。上の句が独自であり、それゆえに切なさが増す。
★薫風に洗濯物のからまりて隣のシャツと肩組んでおり 雲仙 酒井良美
★キューピッド絶えて雌雄の出会いなき盛るかぼちゃに我の手を貸す 諫早平松 茂
★ひたすらに厨の隅で生きている芽を出す根を出すジャガイモ数個 諫早 田島久美子
★好きな花を活けて愉しむ姉がいるケアハウスからの月の便りに 五島 都々木邦子
★平戸海勝った負けたと古里は老いも若きも挨拶代わり 佐世保 萩山義人
★枯れ残るいのち抱きて蟷螂の松の小枝に眠る小春日 西海 原田 覺
★五島へと夕陽がつなぐ光る道くれないの空こころ離れず 西海 深川好美
★山の田に水の張られしところあり夕焼け映り明るくなりぬ 雲仙 山本博子
★主無き藪と化したる果樹園に証のごとく枇杷の実熟す 諫早 野崎治行
★もう着ないワイシャツ一枚野良着とし庭の草抜く五月の晴れ間 長崎 工藤洋六
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★ようやっと朝のせわしさ一段落出涸らしの茶をズズッとすする 松浦 森 美和子
★ステージ4その世界とは初めてのこと多からん空を見上げる 長崎 平野純子
★小一の妹を連れて登校の小二の兄はバッグ持ちやる 諫早 中島綾乃
★ランドセル放り投げ木に登り枇杷を山ほど食べた懐かしき日々 島原 本多たつみ
★投稿を迷いつづけて時流れ再びハガキにつたなき三首 長崎 古川綾子
◎柳壇 永石珠子選 題「積む」
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★大型に積み込むほどに救助品 諫早 平松 茂
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