6/7山梨新報「しんぽう文芸」。山梨の句友、田辺義樹さん報。
◎柳壇 坂田よし江選

★つけ木添え気持ち返した昭和の輪 市川三郷 岡部 登

 【評より】古き良き昭和初期の近所の付き合い。

★赤提灯社会の縮図詰ってる 中央 志田末男 

★さり気ない優しい友の情にふれ 甲府 小沢春美

★断捨離と古い記憶がせめぎ合う 大月 和田一成

★窓辺から新入生のはしゃぐ声 山梨 河野英俊

★病院の待合室でクラス会 富士吉田 権正和義

★頂で暫し無になる山登り 甲府 田口節子

★やっと咲くボタンの花に雨無情 甲府 大森和男

★衣替え着もしない服またしまう 中央 鈴木節子

★この話笑顔で聞くが疼く傷 甲府 三科恵美子

★優しさを恋の予感と勘違い 甲州 武井透江

★歳重ね父母の思いが身に沁みる 富士吉田 三浦てる子

★ついといで振り向きながら猫が行く 中央 鶴田和彦


◎歌壇 袮津達子選

★佳い句など望まず休めと竹落葉はぐれ羅漢の肩かた手にと 甲斐 松田健嗣

★真っ青な空の境にいるようなネモフィラの丘あおい花園 甲州 秋野正彰

★昼休みいっぱい遊んで来たんだね汗びっしょりの子等の髪の毛 笛吹 石倉絹子

★山鳩のくぐもる声にゆっくりと深呼吸しつつ起き上がりたり 富士吉田 中村 蓮

★「どっこいしょ」と腰を下ろし「よいこらしょ」と立ち上がるこの頃のわれ 甲府 高瀬孝人

★天皇から授与されし璽を押した菊御紋の額わが家の壁に 甲府 中澤栄使

★ぽんぽんと弾んでいるよな小手毬よ風はさわさわ心うきうき 甲斐 広瀬香子

★富士山は何時でも何処でも富士山で真っ直ぐにあり吾もかく在らむ 甲斐 山田広美

★母の日に息子孫から紅い花平和な日々の永きを願う 甲府 天野 正

★人去りし古い屋敷の庭先に朝露に濡れうつむきし薔薇 富士吉田 樹 俊平

★茶飲みつつ苗はどうする種まきは誰もが講師菜園仲間 神奈川 望月真佐夫

★日溜まりのベンチに凭(もた)る老夫婦優しい笑顔われもにっこり 富士吉田 武田妙春

★何悩む孤独のように見える娘よ親は静かに見守るばかり 甲斐 深沢介子

★夏来たるホームセンターの野菜苗駐車場まで溢れていたり 甲府 磯野 薫

★若い頃気にもしなんだ健康を今は度々気にかけている 富士吉田 田辺義樹


◎俳壇 山田省吾選

★夕されば瀬音に鮎の遡上かな 大月 小俣義人

 【評より】(鮎の)稚魚は秋、川を下り翌年成長して川を遡上する。夕刻、日が西山に傾く頃、鮎の群れの勢い良い遡上を見る。浅瀬の流れを音立てて行く若鮎の雄々しさに目を見張る。実際に目にした景をじっと見て一句にまとめた。

★湖風に小梨の花の揺れやまず 富士吉田 青柳時子

★カヤックの五艘が続く雲の峰 中央 志田末男

★再建の聖牛四基聖五月 甲斐 松田健嗣

★農鳥や棚田に並ぶ田植笠 大月 志村忠義

★ジャズの音の響く高原水温む 富士吉田 樹 俊平

★四阿や話題つぎつぎ若葉風 甲府 桑原博子

★滝過ぎて又滝音を聞く深山 甲府 中村 彰

★若葉風山迫りくる雨上がり 甲府 伊藤隆雄

★薫風や湖面煌めき鯉跳ねる 甲州 水上優子

★卯の花や一人暮らしに慣れし頃 市川三郷 一瀬利彦