6/3毎日俳壇・歌壇。


◎西村和子選

★佇めば遠き夏山我を呼ぶ 唐津市 梶山 守

★テーブルに予約カードや蔦若葉 さいたま市 根岸青子

★鴨川の飛石跳んで日永し 大阪 池田壽夫

★老鶯のわたる前方後円墳 東京 福島照子


◎井上康明選

★回り道して男滝なり女滝なり 京田辺市 加藤草児

★ふどしより覗くふぐりや父の夏 島根 重親峡人

★郭公やしばらく僧と道連れに 周南市 九内 千沙


◎片山由美子選

★椎の花夜気に匂ひを放ちけり 豊田市 松本 文 

★母の日の父のふるまふカレーかな 野田市 塩野谷慎吾

★ぼうたんのくづるるばかり留守三日 倉敷市 清水久美子

★鶯の声渋滞の列に降る 奈良市 伊東 勝


◎小川軽舟選

★ででむしや大きな傘とちさき傘 広島市 村越 縁

 <評より>傘を差した親子がアジサイの葉のカタツムリを眺めている情景。

★とりあえず猫ちゃんと呼ぶ子猫かな 東大阪市 勝村郁子

★水温む川の喜び音に出て 北九州市 宮上博文

★春暁の星瞬ける帰国便 西尾市 金子恵美

★赴任せし小島に拾ふ桜貝 さぬき市 景山典子

★風にのる素読の声や水温む 札幌市 村上紀夫

★林立のビル遺構めく黄沙かな 兵庫 小林恕水


◎加藤治郎選

◎水原紫苑選

◎伊藤一彦選

★静かに過ごしたいだろうに騒がれ絶えず人来る心霊スポット 奈良市 石田水紀

★セクハラにパワハラマタハラカスハラとこの略は略ハラじゃない? さいたま市 長谷川幸子

 <評>さまざまのハラスメントの略語。この省略は言葉への「略ハラ」と鋭い風刺だ。

★立場上ウソを言わされ悩む人いるんだろうなどの組織にも 塩釜市 高橋永喜

★何百回病院通いをしただろう その積み重ねにて卒寿迎えぬ 日野市 浅井一蓮

★甘き香に気づき頭に流るるは父の十八番の「くちなしの花」宮崎市 上米良綾子

★旅支度の父の棺はかつがれて乗りこむ車茶碗も割られ 四万十市 佐竹紫円


◎米川千嘉子選

★エンシュアの空き缶だらけの袋置くビールの空き缶だらけの横に 広島市 堀 眞希

 <評>エンシュアは通常の食事が取りにくい場合の栄養剤。介護現場で出た空き缶か。 空き缶からさまざまな生の気配が。 

★早逝の友の手紙に支えられ九十二歳五月のべンチ 大阪市 下川佳子

 <評>長寿ゆえの寂しさにしみる「早逝の友」の言葉。季節の緑も作者を慰める。

★母はまた同居を拒む常滑の急須の尻をぱんと叩いて 千葉市 芍薬