6/1西日本新聞「ながさき読者文芸」

◎俳句 籏先四十三選

★たわわなるブルーベリーや若葉風 平戸 田地 花

 【評より】実は青紫色、すがすがし風が吹く朝の時間帯に収穫する。

★通潤橋命の水で田植えかな 佐世保 牟田一彦 

 【評】水利に恵まれなかった白糸台地に住む民家を救うために建設された石橋。まさに命の水である。 

★髪切れば街も明るし風光る 諫早 森 裕子 

★五月雨や一字欠けたる開墾碑 佐世保 小山雅義

★怪獣ののたうつ如く青嵐 諫早 関山悦子

★ポケットに去年のお札や更衣 佐世保 川原豊子

★タンス開け見切りし難し更衣 佐々 林 エイ子

★枇杷熟れて一際さわぐ鳥の群 大村 内田和代

★棘隠し妖艶かもす赤きバラ 長崎 溝口健治

★独り居を楽しむ夕べ豆御飯 島原 野田耕起

★夏来たる屋台の先の豪華船 佐世保 詫間初美

★山吹の囲みし古き母屋かな 佐世保 松崎伸苑

★昼餉へと帰る畑の端風薫る 諫早 安浪加余子

★筍の窯あふれ出す糠の泡 西海 森 保子

★ささやかな退院祝ひ新茶かな 諫早 篠崎清明

★「再会」と言ふ名のBARや夏来たる 佐世保 牛飼水鳥

★薔薇の昼豪華客船接岸す 佐世保 馬場定水

★賑やかや燕の巣ある下足室 佐世保 太田恵子


◎歌壇 安田博行選

★遠足の子らが挨拶して行くを仕事休めて手を振り送る 大村 内田和代

★苦も楽もともに過ごした五十年妻は今日から車椅子なり 大村 溝田吉大  

★夕映えの歩道橋ゆく女高生ら「来たっ !」とどどどバス停に駆く 諫早 平松 茂 

★治癒見込みの無き難病の妻逝きて子と励ました頑張れの悔い 佐世保 鶴田竹一

★孫自慢病気自慢の輪の出来て同窓会に渾名飛び交ふ 対馬 神宮斉之

★気に入りのレトロなバック六十年君がくれたる私のたから 佐世保 松崎伸苑

★母の日のジョギングシューズ箱の中「飾りじゃないよ」と四男笑う 壱岐 深見秀子


◎諧句 松下冨士子選

★一日に二合炊飯午前五時 対馬 神宮斉之

★卒寿いま合掌の時多くなり 西海 峯山 勇

★古希集い白髪と皺を称え合う 南島原 板山良継

★ありがとうその一言に励む日々 松浦 松浦靖子

★亡き母の形見いとしい数珠枕 諫早 前田良子

★母の日のカーネーションもやや小振り 佐世保 松崎伸苑

★入選の諧句に生きる意欲湧く 佐世保 小山雅義

★メモ帳に篩い落とした句が残る 松浦 前田サツキ

★ひた走り小さくなって咲いた母 長崎 荒井孝憲