俳句ポスト365 兼題「山笑う」の月 中級者以上 月曜日結果発表【類想コメント】(夏井いつき)(要約)


◆三春の季語 多くの歳時記には、「山笑う」は山が芽吹きはじめた頃の様子なので、早春の景である…というような説明があるが、分類は「三春」。

 個人的には、芽吹き始めた頃に山が笑いだしたなと感じとるのは事実ですし、更にどんどんは春が進んでいくことで、山の笑い方も表情が豊かになっていく、と解釈している。

◆時間の考え方 今回の投句には、「夜」という時間設定の句もありました。が、「山笑う」という季語は視覚的要素が強いと考えます。

 似たような意味で、豪雨の中で「山笑う」という句にも違和感を持つ。この季語に「晴れ」のイメージが強いから。

◆地域の考え方 亜熱帯、熱帯のようにはっきりした四季がない国だと思われる異国の光景として、「山笑う」というのも、どうなんだろうと疑問を持つ。

◆取り合わせの考え方 「笑う」という動詞があるので、何か滑稽なことと取合わせればよいのだ、という考え方が間違っているわけではないが、取り合わせた「俳句のタネ(=季語以外のフレーズ)」にも、いかにも春らしい気分やイメージがあると、季語に対する説得力が生まれる。

◆類想

[イメージ]・明るい・元気・希望→退院、完治、検査に異常なし(→つらいこともあるけど、がんばろう!)・未来へ(→入学、入社、新しい生活)(→妊娠、出産、みどりご)・なつかしさ(→ふるさと、同級生、幼馴染、同窓会)

[場所]・〇〇の向こう、車窓、風呂の湯気の向こう・〇〇の先、指の先・〇〇の背、後ろ・トンネルを抜けたところ・眼下に〇〇を見下ろしている・ビルの隙間

[山の様子]・ピンクや黄に染まっている(桜や菜の花)・さまざまな緑色・〇〇を懐に抱えた山・清流、渓流のある山・ソーラーパネルの設置された山・山腹に傷、創・風や雨や靄などを纏う山

[いろいろな行為との取り合わせ]・ゴルフ、野球・ドライブ・散歩、自転車(→手をつないだり駈け出したり、サドルを高くしたり)・遠足、ピクニック、キャンプ(→手作りのおむすび、コンビニおにぎり)・車椅子やベビーカーを押す・田畑を耕す、庭の草むしり・通勤(車窓から見える「山笑う」多し)・通学、通園(→ランドセル、黄帽子)・逆上がりができた、補助輪が外れた

[思わず…]・深呼吸・自分も笑う、歌う・ヤッホー

[その他]・山も私も〇〇も笑う、野も海も川も湖も笑う・露天風呂から眺める山(が笑う)・雨上がりの山が笑う・被災地の復興を祈る・大谷のホームラン…・単線車両・ほどけがちな靴紐

◎今回の兼題「山笑う」中級者以上投句欄への投句は、投句数4061句、投句人数1691人。

◎以下、類想句の一覧より。

一滴は大河になりて山笑う 竹の子

車窓から思い出の道山笑う 藤 えま

しりとりの始まる車内山笑ふ 川越羽流

還暦の同窓会や山笑う 愛柑

集ふ友のおしゃべり尽きず山笑ふ たなべ早梅

ほかほかの産みたて卵山笑ふ 田邉真舟

太陽光用地となりて山笑う 高本蒼岑

寛解し復帰せし友山笑う るびちゅ

友の待つ里へひと駅山笑う 竹内ユキ

洗はれて雨後の陽射しに山笑ふ 埼玉の巫女

大小の牛の数多や山笑う 千鳥城 チーム広ブロ

土砂崩れそのままなれど山笑ふ 防子

ひた走る列車一両山笑ふ 井口あきこ

函館のロープウェイ越し山笑う 円谷琢人

見知り合ふ児童ら迎へ山笑う 清水明美

今日からは高校生や山笑う 村上 薫

笑ふ山ところどころに笑窪有り Kかれん

山笑ふ石をも穿つ雨のあと 球追

開け放す助手席の窓山笑う 菅原ゆう

数多なる生命を抱きて山笑う 樅ノ木・ライラック

よーいドン孫に離され山笑う 岸壁の龍崎爺

群青の海さわぎだし山笑う 入口弘徳

池越えのナイスショットや山笑ふ 小山 晃

皺の数ほどの幸せ山笑う ふくじん

山笑ふ一両電車息む坂 みゆむうしば

被災地の復興必ず山笑う 三島千鶴

園児等の手つなぎ散歩山笑ふ 夏目たんちゃん

絶叫のバンジージャンプ山笑ふ とおやまみんく

旧田のソーラー眩し山笑う スズランチイコ

一列の黄色い帽子山笑う 小和布

駆けまわる子らの歓声山笑ふ 立野音思

山笑う眼下きらめく浦の海 余熱

地震などないかの如く山笑う 柊瞳子

孫娘制服新た山笑う 早坂一周

尊富士に沸き立つ故郷(こきょう)山笑う よかわもりお

オレンジの二両編成山笑ふ 中村想吉

百千の命遊ばせ山笑う 峰泉しょうこ

湖面には雲の映りて山笑ふ 珈藤絵本

「かがやき」の敦賀延伸山笑う 原島ちび助

園児らの山羊とお散歩山笑う みやかわけい子

堤防の自転車の列山笑う 房総とらママ