5/27長崎新聞「郷土文芸」(1) 俳壇・歌壇・柳壇。

◎俳壇 前田弘明選

★薔薇園のベンチに杖と魔女の本 長崎 入口靖子 

 (評)豪華なバラ園による幻覚の風景であろうか。幽玄で満ち足りた不思議なひとときを表現する。

★ピアノ弾く指十本の春の音 南島原 松永文則 

★麦秋の波はさざ波明日は晴 島原 林 倫子 

 (評より)さざ波のように揺れる麦の穂が刈られるのを待っている。 

★野に帰る山猫の眼や新樹光 佐世保 相川正敏 

★樹々の香に包まれている聖五月 五島 田中裕子 

★爆心の碑に黒き風吹く薄暑 長崎 入口弘德

★風神の振り分け自在春落葉 西海 原田 覺

★背なの子をあやす畑道葱の花 長崎 浦田茂孝

★逆縁の翁の屋根につばくろ來 東彼杵 沖永愼吾

★葉桜の木漏れ日ゆれて乳母車 時津 松園正雄

★野球部の掛け声はづむ麦の秋 長崎 島崎日曻

★星近く鯖火遠けれ対馬灘 平戸 本川 誠

 ※「鯖火」=漁の船の灯。夏の季語。

風薫るお堀に蒼き松の影 西海 楠本シヲリ 

★母白寿わが背に軽し啄木忌 佐世保 小山雅義 

★それぞれに苦労華咲く更衣 佐世保 倉本健治 

【選者吟】青柳をふりみだしたる疾風あり


◎歌壇 寺井順一選

★草刈機の背中に重くなりし時エンジン止めれば広き青空 雲仙 山本博子

★時々は心に包帯まいてやる春の陽射しに身をあずけつつ 佐々 敦賀節子 

★幼子が見舞いに来れず母に託す絵とお手紙の愛おしきこと 長与 清田俊二

★朝餉前の新聞ひらく音さやか活字を追いつつ今日がはじまる 諫早 執行興一

★湧水に冷や飯(いい)梅干し浸しては食べたる幼き日の懐かしき 五島 都々木邦子

★尖塔の花十字架に春の陽のかげりて島の朱き夕ぐれ 西海 原田 覺 

★清らかな山河の水辺で蛍舞い親しむごとく我に近づく 松浦 小林壽子

★ふるさとを年月遠くへだたりてふとも心をよぎる木枯らし 長崎 高比良照子

★教育は出会いと気づく小学の恩師の教え老いの身に在り 大村 福谷健吉 

★わが地区のたった一人の新入生黄色の帽子で懸命に歩く 雲仙 酒井良美

★爺の指ぎゅっとつかんだ乳飲み子の一途の力やわらかさあり 長崎 池田 昇 


◎柳壇 井上万歩選 題「お礼」

★恙なく卒寿のお礼諏訪詣で 長崎 上野幹夫 

★生かされたお礼献体申し込む 長崎 古本 仁

★応援のお礼に能登で四股を踏む 佐世保 八重野さくら

★初給与父母へお礼のプレゼント 長崎 本多政子

★横断歩道お礼のお辞儀ランドセル 佐世保 萩山義人 

★無事財布戻り紙面でお礼言う 長崎 三瀬則子

★合格のお礼参りに絵馬吊るす 壱岐 瀬川美枝子

★懸命に生きた母へのありがとう 南島原 溝田京子

★お礼にと朝採り野菜垣根越し 長崎 森本志真子

★初孫のお礼参りに弾む声 長崎 柴田教子

★有り難うの一言遺し祖父は逝く 長崎 中村行男

★何よりも嬉しい孫をありがとう 長与 渡部克子

★深々と頭を下げる退院時 長崎 引地眞理子

【選者吟】苦労かけた妻へ介護というお礼 


◎ジュニア俳壇 江良修選

★(秀逸)校門をくぐるとついに先輩だ 佐世保・福石中2 中村美奈

(以下、佳作より)

★菜の花や芽生える季節きっとくる 佐世保・小佐々中2 鴨川鳳介

★たんぽぽは笑顔にさせる魔法あり 小佐々中2 田中佳名慧

★子のために舞い立つ燕は堂々と 小佐々中2 深江彩葉

★春まつりたいこたたいて盛りあがれ 小佐々中2 三藤安結妃

★すい道の上の古道の山桜 小佐々中2 川添実紗

★歓迎遠足これからよろしく一年生 若松中3 松本大輝

★統合しドキドキでいる新学期 若松中2 小濱心美

★新しいくつで歩く桜道 若松中2 濱崎 蒼

★ランドセルじゃない友と照れ笑い 若松中1 川村りさと

★入学式大きな返事でふくらむ期待 福石中3 吉居未央

★遠足で囲んで食べるお弁当 福石中3 浅井心晴

★制服がとても大きい入学式 福石中3 北村結菜

★長い道友と歩けば疲れない 福石中2 山北祐聖

★前日に桜が咲いて入学だ 福石中2 春田賢心

★新入生微笑む顔が光ってる 佐世保・愛宕中2 濵田絢人

★新学期期待ふくらむクラス替え 愛宕中2 大野 隼

★桜舞う新たな風が校内へ 愛宕中2 米村鈴音

★新学期知らないメンバー今日だけよ 愛宕中2 山田香織


◎ジュニア歌壇 杉山幸子選

✦(秀逸)体育館みんなで弁当食べる中あの人を見て手がとまっている 佐世保・愛宕中2 山田夏希 

✦(〃)ちょうふたつひらひら飛んで子どもらがおいかけまわ す放課後の道 佐世保・小佐々中2 田中佳名慧

✦先生の教え子たちが卒業し翌日目が赤くはれていた 佐世保・鹿町中3 吉浦凛太朗

★弟が新入生と知っててもいろんな気持ちずっとモヤモヤ 鹿町中3 小川峻弥 

★散っていく桜の雪をつかまえて願いをこめる大きな夢を 鹿町中3 西村萌々菜 

★あざやかな暖色の色に囲まれて夢と希望が胸いっぱいに 鹿町中3 三徳屋珠愛

★初春の日心地よい風が木々ゆらすベランダに舞う花びら一枚 鹿町中3 前田航太

★友達と桜木の下待ちかまえ風が吹くたび一斉CATCH 鹿町中3 巻澤菜美

★出会いの日先輩になった私たち後輩たちを引っぱっていく 鹿町中2 松尾朔夜 

★新学期 年に一度のクラス替え大事な友との最後の一年 佐世保・崎辺中3 濱本茉衣

★新学期桜が散ってゆく中で先輩としての意識芽生える 崎辺中2 福光桜姫

★外でるとあたたかい風鳥の声心落ち着くいやしの時間 小佐々中2 田島瑠夏 

★思い出す一年前のあの景色桜の花の甘い香りを 小佐々中2 木村里依紗

★手がふるえ新入生は目の前にかすかにひびいたシュー トの音が 愛宕中2 田口穂果

★新緑のように輝く新入生見た目も内も心の中も 愛宕中2 瀨崎修斗

★新学期あの子と同じ教室で気持ち高まり舞い上がりそう 愛宕中2 松尾煌平

★赤点を取った次の日弁当は真白の米に赤い梅ぼし 愛宕中2 山田隆信

★一年生笑っている子が二人いるにこたすにこでにこにこですね 愛宕中2 柏木海惺 

★美しい桜の景色やってくる新生活の始まる証 愛宕中2 大谷愛希 

★新学期後輩できる楽しみで春の風がね吹いてきたなぁ 愛宕中2 大谷愛華 

★桜咲き菜の花も咲き四月なりおだやかな春いま始まりぬ 愛宕中2 眞浦かずき

★大事な日新入生の晴れ舞台桜散るのはどうしてなのか 愛宕中2 宮田結菜 

★入学式制服姿に変わったよ言葉遣いも少し変わった 愛宕中2 川崎心陽 

★入学式気持ちとともに歩き出しつかみとるのは春の日差しよ 愛宕中2 竹邉夢翔 

★春風に押されて走る私たち希望の風に乗る私たち 愛宕中2 永峯蒼來 

★お祝いの歓迎行事やるうちに一年生にもどったみたい 愛宕中2 山田望美 

★入学し先輩達との初交流なかなかなじめず端にいる僕 愛宕中2 豊永遥輝


◎「グループ作品」は以下のものだけでした。

(リラの会)

★母の名の薔薇見てはしゃぐ童かな 幸 ひかる

★ムンクの叫びひまわりに声あらば 坂口晴子

★新社員黒き群れなし横断す 山本芳江

★夏場所や綺麗どころの薄化粧 京極常徳

★世界中戦争という毒茸 小幡伶子

★鯔背(いなせ)なり志ん朝さんの夏羽織 石尾真智子

★武者人形二つ僕は六つ持っていた 鶴田雅子

★青春のロシア民謡五月祭 松本悦子


◎「第119回長崎県綜合短歌大会」(長崎県歌人会主催)の結果が掲載されていました。これは後日、わかりやすいようにしてまた投稿します。

◎5/27「きょうの一句」。こちらも後日またこの一週間分をまとめて投稿致します。下の「あわい」欄も同様。
◎「あわい」欄