5/25西日本新聞「ながさき読者文芸」

◎俳句 籏先四十三選

★宿坊の起床四時半百千鳥 西海 楠本シヲリ

★風光る肩より広しランドセル 佐世保 村上美佐子 

★みそしようゆ借りて借りられ昭和の日 諫早 安浪加余子   【評より】昭和はまだ向こう三軒両隣の習いが残っていた。お互いに助け合う精神。

★城仰ぎ栄華を偲ぶ花菖蒲 島原 野田耕起

★短夜や呼び子吹く如磯鵯 諫早 田中道信

★元気なる泣き聲たてて初節句 諫早 碇 タキエ

★しゃぼん玉光集めて大空へ 諫早 石田志帆

★葉桜となり混迷の世を生きる 佐世保 牛飼水鳥

★対面は出来ず親子の鯉幟 松浦 舩原清洋

★春雷に脅えてをりぬ小犬かな 平戸 古川敏郎

★外海の波静かなるおぼろ月 長崎 溝口健治

★さくらんぼ捥ぎて隣へお裾分け 大村 松永喜美子

★指先の深き香りや菊挿芽 佐世保 川原豊子

★父・母の面影遠し花蓮 諫早 廣川 豊

★ポケットに肥後守あり昭和の日 長崎 成瀬至楽


◎歌壇 黒田邦子選

★言葉なくただ立ちつくすその絵には赤く染まりし根獅子の海が 平戸 森 久美子 

 【評より】平戸市の根獅子(ねしこ)の浜は隠れキリシタン殉教の地。

★啓蟄の過ぎれば蜥蜴石垣にジュラ紀の顔でわれ睨みいる 佐世保 小山雅義

★網破る大粒イチゴあかあかと五月連休の孫子待ちわぶ 佐世保 鶴田竹一

★昨年の母の日にあげたふじいろのセーターいまだタグついたまま 大村 溝田吉大

★人づてに友の訃報を聞いた日は眠れず何度もねがえりをうつ 西海 田中加代子

★連休の車列見おくる高速道われら農家は農繁期なり 大村 内田和代 

★料理好きの息子夫婦の弁当はキャンバスのやう花咲き競ふ 佐世保 松崎伸苑


◎諧句 川田金太郎選

★何事もやってやれない事もある 諫早 平松 茂

★戦火なきこの国の空舞う鳶 大村 串崎洋一

★夫逝き二十年いま感謝のみ 大村 松永喜美子

★同期会子どもの次は孫自慢 佐世保 内田弘毅

★遠足に行く子供らがおじぎする 佐世保 山田テル子

★呼び鈴に人より先に猫走る 佐々 衛藤佳奈子

★八十路坂社交ダンスに輝いて 諫早 前田良子