◎俳句 星野椿選
【評より】春の草に寝転んでみるとそこはかとなく懐かしい母の匂い、親孝行できたであろうか、自問自答しながら母を想うひと時…。
★柳川の堀が舞台の船芝居 朝倉 浅川走帆
【評より】船を何隻も繋いで舞台を作り、旅役者が見得を切る芝居。
★天守閣望む砂浜松露(しょうろ)掻く 唐津 柿崎明子
※「松露」=ショウロ科ホコリ茸の一種。三~四月ごろと十月ごろに松林の中に生える。球状で砂に埋もれている。外皮は白色膜質であるが空気に触れると淡褐色か褐色になる。食用になる。
★提灯に照らされ揺れる藤の花 福岡西 長島一夫
★三方に拾ふ梅の実巫女袴 福津 藤吉靖信
★たまはりし縁大事に虚子祀る 太宰府 入江眞己子
★我が車庫に悠然と住む屋敷蛇 伊万里 田中秋子
★貝寄せに乗りて赴任の島渡船 有田 上野鷹司
★腕白のていねいに解く笹粽 糸島 春田美智子
◎俳句 秋尾敏選
★穀雨とて土にすっぽり入る鍬 福津 藤吉靖信②
★眩しさを突き抜けてゆく揚げ雲雀 糸島 上野純子
★げんげ田やそのまま残す本籍地 宗像 川口茂則
◎短歌 栗木京子選
★球はこび声もはこびし若葉風少年野球に元気いただく 糸島 三嶋邦子
★三姉妹久々に会い墓掃除無沙汰を詫びる母十三回忌 日田 川津裕子
★それぞれに思ひはありて土手に咲く待宵草に佇むわれら 福岡東 堺 多鶴
◎短歌 伊藤一彦選
【評より】見知らぬカフェでベートーベンの「月光」を聴いている。曲の想い出は或る人と関わっており、形見のペ ンでその人の面影を詠んだ。すでに世に亡き人への相聞か。
★亡き祖父に分けてもらいし石斛が今は我が家で初夏を迎える 福岡南 真木聡恵
★麦畑の畝に隠れしきじ猫のとんと見えずに三月となりぬ 糸島 森脇由利子
★真白きヒトツバタゴの光には嫁の尊父の魂こもる 小郡 飯田淳子
◎川柳 森中惠美子選