5/19朝日俳壇・歌壇。

◎大串章選

★駄句も又生きてる証花は葉に(長野市)縣 展子

◎高山れおな選

★花貝母(ばいも)母の遺せし料理帳(町田市)吉野和子

★少年院親子の茶摘み新茶会(浜松市)梶 まり子


◎小林貴子選

★一枚に皆で納まり惜しむ春(越谷市)金田あわ

 ※「一枚」とは写真のことのようです。

★復旧の水道の水風光る(石川県能登町)瀧上裕幸

★周りとは一線画し竹の秋(東京都府中市)保坂俱孝 

★釈奠(せきてん)や生徒の踊りうやうやし(中間市)櫻井健一

 ※「釈奠」=「釈」も「奠」も置く意。先師の霊をまつり供物神前に供えること。日本では主に、陰暦二月と八月に孔子を祀る儀式。

★新人の挨拶硬し花の宴(松山市)福山みどり


◎長谷川櫂選

★初鰹黒潮世界熊野灘(新宮市)中西 洋

★骨格も声も少年夏来る(福岡市)藤掛博子

★蛍いか濃き潮の味楽しめり(名古屋市)山田邦博

★とりどりの自由謳へやチューリップ(長崎県波佐見町)川辺酸模

◎佐佐木幸綱選

★谷川岳の麓を流れる湯檜曽(ゆびそ)川轟音立てて雪代(ゆきしろ)奔る(前橋市)松村 蔚

 ※「雪代」=雪がとけて川に流れ込む水。雪代水。

★先住の穴より蛇の出てみれば大騒ぎされる新興宅地(神戸市)金澤 健

★日本のソメイヨシノがキーウにて白く咲きおり人集いおり(水戸市)中原千絵子 

★甲冑の修理に大童今年から五月になった相馬野馬追い(福島県)守岡和之

☆オートバイもうやめなさいと妻の言ふ月光仮面老いて従ふ(加東市)藤原 明 

 ※馬場あき子共選

★赤ん坊抱くような手で絹漉しを掬いし店主の閉店の文字(寝屋川市)今西富幸


◎高野公彦選

★「プーチ・ダモイ」のスカーフ巻いて立ちつくす寒いロシアの妻や母たち(生駒市)辻岡瑛雄 

 【評】「プーチ・ダモイ」はロシア語で「家への路」の意。戦場の夫を返せ、息子を返せ、と反戦の集会をする女性たち。

★閘門(こうもん)に吹き寄せられた花筏逃げる場所無きガザの人らは(岡山市)三好英男 

 ※「閘門」=運河放水路などで水量を調節するための堰。

☆夜はとても絶望的に長かった勤務後の酒席が義務だったころ(東京都)上田結香

 ※永田和宏共選。

★むかい合い秘密をひとつ打ち明けて笑ってくれて焼き鳥パーティー(富山市)松田わこ


◎永田和宏選

★来月からポリクリ始まると孫はいいピアスの跡を気にしていたり(寝屋川市)橋本忠雄 

 【評より】ポリクリは医学部生の臨床実習。

★大地震を経て今年も花のトンネルに列車の入り来る「能登さくら駅」(岡山市)梶谷基一


◎馬場あき子選

★好きな人の名を明かすかにそれぞれの気に入りの歌教え合う子ら(奈良市)山添聖子

 【評】歌好きの葵、聡介姉弟の素敵な場面。

★歯医者にて口あんぐりの状態できらいなものの順番を考える(アメリカ)ソーラー泰子 

★参道の馬酔木の花をすり抜けて鹿は連れだち陽だまりに行く(奈良市)宮田昌子

★スミレ 咲く花鉢の上生れたてのカナヘビ陽を浴ぶ長き尾伸ばして(松戸市)猪野富子