角川「俳句」5月号点描(1) 前川弘明・津高里永子
「百千鳥」作品8句 54p

       前川弘明(海原)

★くさめして朝の太陽紅うする

★桜咲いたぞおーいおーいと舟から声

★春月やまぶた洗えばパリが見ゆ

★初蝶が考えている石の上

★菜の花にふれて郵便夫は走る

★絶壁があるから唄う百千鳥

★桜散って浮くナガサキの水溜り

★掃き溜めし落葉吹かるる三鬼の忌

 ※西東三鬼の忌日は4月1日(1962年)

「流氷」作品12句 98p

津高里永子(墨BOKU・小熊座)

★海引き攣らせ流氷の戻りくる

★流氷や遠く発電所のけむり

★渦模様ある流氷の息遣ひ

★流氷の一直線に裂くうねり

★流氷に亀裂そろそろ別れどき

★天地晴れわたり流氷置き去りぬ

★砕けつつ流氷ひたと水脈閉ざす

★流氷と照らし合ふ斜里岳の雪

 ※斜里岳(しゃりだけ)は、北海道知床半島にある火山(標高1,547)m。

★流氷を歩く影なき影を踏み

★流氷の鷗病母の眼で見つむ

★流氷がふさぐ国後島の波

★鷗消ゆ流氷帯の光る涯


※(2)篠崎央子・安田のぶ子・倉田明彦、に続きます。