5/12朝日俳壇・歌壇。
★恐ろしき花びら地雷春寒し(伊賀市)福沢義男
※ロシアはウクライナ戦線で「花びら地雷」と呼ばれる対人地雷を使っている。12㌢ぐらいの小型。空中から散布。
★ぼうたんの開きて天地押し広ぐ(北本市)萩原行博
★人の句に心うるほす花の昼(玉野市)北村和枝
◎大串章選
★人生の袋小路で春を待つ(筑紫野市)二宮正博
【評】「春を待つ」がポジティブで良い。焦らず待てば「抜小路」は必ず見つかる。
★春夕焼敢へて決めない進路あり(仙台市)柿坂伸子
★花吹雪病癒えたる夫とゐて(加古川市)森木史子
★被災者の離れ離れの春惜しむ(福島県伊達市)佐藤 茂②
★囀りを身籠る山のありにけり(市川市)をがはまなぶ
★掘りたての筍の香や友は亡き(奈良県広陵町)松井矢营
◎高山れおな選
★俳人に覗き込まれて水温む(境港市)大谷和三
★歌膝のオランウータン飛花落花(川西市)糸賀千代
【評より】歌膝は歌仙絵などに見える片脚を立てて座るポーズ。
★米軍の切つ先にゐる余寒かな(福島県伊達市)佐藤 茂③
★深空あり花が花生む吉野山(四日市市)伊藤 元
★せせらぎに花粉降らすや猫柳(ドイツ)ハルツォーク洋子
★カラヤンをLPで聴く昭和の日(草津市)あびこたろう
★しやぼん玉あの子この子の夢の数(稲城市)日原正彦
◎小林貴子選
★ゑみたたへ円空仏はおはします流るる渦の木目のみ面(箕面市)大野美恵子
★つつがなく白内障の手術終え星もさやかな今夜のさくら(宇都宮市)手塚 清
★春来たりトラクターから鍬までを展示し賑わう大農具店(舞鶴市)吉富憲治
★園児等が怖怖のぞく蟇の卵入園式に一気に孵る(戸田市)蜂巣厚子
★ウクライナのヒマワリの種も祝福にやくだつことをねがっていたはず(盛岡市)山内仁子
★声張って短いセリフ言い終えし「モグラ1」なる吾子のにこやか(光市)永井すず恵
★実家には黄金時代の痕跡の十人用の大鍋がある(綾瀬市)小室安弘
◎佐佐木幸綱選
★おおき腹ずしりと据えて黒豚は寝息立ておりさくらの下に(稲沢市)伊藤京子
☆子には子の散歩の流儀があるようで石はけるべし穴のぞくべし(横浜市)吉澤信子
※永田和宏共選。
★見納めと思っていたのに今年又ベッドを起こして見る山桜(岡山市)伊藤次郎
★鳩を追う桜の下の幼子は背中にハーネス付けられており(高槻市) 中島裕子
★トランクに手品道具を詰め込んで施設に人の笑顔見に行く(岡崎市)三上 正
★窓口でめだたぬように保険証の下に忍ばす被爆者手帳(春日市)月川勝代
◎高野公彦選
★能登輪島帰りたいでも帰れない実家半壊未だに焦土(碧南市)島谷春枝
★ライトアップ消してください夜桜は月夜に限りますね晶子さん(奈良市)多田俊子
※「清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ遭う人みなうつくしき(与謝野晶子)」
★朝に見る大谷選手のホームラン夜のシカゴの空が吸い込む(五所川原市)戸沢大二郎
★吊り橋を園児の一団渡りゆく悲鳴歓声なかなか進まず(出雲市)塩田直也
★パレスチナ支援のバッジ三百円さくらまつりの出店に並ぶ(松戸市)渡辺道子
★尺貫で力士の体をあらわした昭和は遠し栃若時代(三郷市)木村義熙
◎永田和宏選