◎俳句 籏先四十三選
俳句部門では私のよく知っている人が3名も受賞しておられ大変嬉しく思ってます。優秀賞に牛飼水鳥さん、佳作に大先輩の加茂宮宮江さん、今でも同じ句会でご一緒させていただいている馬場定水さん。
★天は紺地は一望の大枯野 佐世保 小山雅義
◇優秀賞(2句)
★反核のデモに加はる赤とんぼ 佐世保 牛飼水鳥
★浮き腰の子らに舌吐く青大将 雲仙 伴信彦
◇佳作(5句)
★夏空に若さ弾けるマーチング 西海 森 保子
★正月や小船のような靴並ぶ 南島原 松浦せつこ
★度忘れの台詞愛嬌村芝居 対馬 神宮斉之
★春雨や互いに譲る歩道橋 佐世保 加茂宮宮江
★ふる里はオラショの島や竜の玉 佐世保 馬場定水
◇選外良句(15句)より
★牡蠣鍋や有明海を懐に 諫早 廣川 豊
★浜焚火問わず語りの耶蘇の浜 佐世保 森 誠
★春の闇ベートーベンの目が動く 島原 坂本優美子
★群狼のごとき烏や柿熟るる 長崎 古木義明
★陸蒸気走りし路や風涼し 諫早 田中道信
★参道の玉砂利光る鵙日和 佐世保 相川正敏
★介護士の目配り気配り隙間風 大村 辻 フミヨ
★朝露を添えて切花出荷せり 大村 内田和代
★田を植えて棚田百個の窓明り 雲仙 城臺文江
★嗚呼あの日靴も焼かれし裸足の子 諫早 篠崎清明
★粒ごとに光の天使マスカット 長崎 成瀬至楽
★水仙や小さき抱負を書く日記 佐世保 詫間初美
★春眠をむさぼつている余生かな 佐世保 渡久地弘子
★爽涼や話のはずむ手話の子ら 佐世保 川原田安子
★七月や元気よそほふ老いの見栄 平戸 古川敏郎
◎歌壇 黒田邦子選
◇最優秀賞
★釘袋腰にさげたる少年の語ることなく一心に打つ 松浦 金子寿美
【評より】黙々と仕事をする若者へ作者からのエール。
◇優秀賞(2首)
★少年が見た帆船の雲いずこ今でも時に仰ぐ夏空 佐世保 林田 勝
★吹く風に身をゆだねたる老猟師こころしずかにその時を待つ 対馬 神宮斉之
◇佳作(5首)
★白波のたかき沖へと船を出す鰆がきたと風が言ふから 壱岐 町田典子
★老いふたり蕎麦を食べおり争いのない幸せをかみしめながら 西海 田中加代子
★とりどりの残り野菜で煮る雪花菜(おから)あて字に似合う仕上がりとなる 佐世保 弓削久美子
★言いたきを妻に言い得て心(うら)やすく夕餉のうどんつるつる啜る 佐世保 小山雅義
★仮免許練習中の黄の車遠くを見つむ若きまなざし 南島原 田中よしみ
◇選外秀歌(6首)
★お祝いのことばに添えて割引の知らせの多し誕生月は 大村 溝田吉大
★「焼き場に立つ少年」の影消えやらず終戦の日より幾年経るも 壱岐 百崎治子
★能登地震の映像見れば思いだす息子の遭いし阪神大震災 佐世保 松崎伸苑
★石棺墓に期待たかまる吉野ケ里何処にありや邪馬台国は 佐々 法本安子
★妻の留守続きて指のあかぎれの痛む度に思ふ家事の厳しさ 佐世保 鶴田竹一
★やっとやっと辿りついたよ百二歳ゆっくりゆっくり掃除、洗濯 大村 辻フミヨ
◎諧句 川田金太郎選
◇最優秀賞
★凄まじい進歩の陰に失せるもの 松浦 前田サツキ
◇優秀賞(2句)
★幸せで上書きされる苦い過去 佐々 法本安子
★散る枯葉一葉一葉に物語 佐世保 鶴田竹一
◇佳作(5句)
★子は宝平和を紡ぐ救世主 松浦 舩原清洋
★言の葉にスパイス効かせ句を紡ぐ 諫早 松原静枝
★雲に似て人もドラマを繰り返す 島原 伊藤ミズエ
★つつがなく平凡に生き自画自賛 長崎 荒井孝憲
★湯巡りに妻のハミング聞く車中 壱岐 砥綿 滿
◇選外佳作(6句)
★呼吸する限りの学び未だ米寿 対馬 神宮斉之
★人生の悲喜を操る句の冥利 松浦 皆川源太郎
★胸飾る花誇らしげ卒園児 佐々 衛藤佳奈子
★居酒屋の二十歳と喜寿を祝う酒 長崎 松尾利惠
★芒の穂ふわり膨らみ終わる秋 南島原 上田善悟
★過疎の地に半世紀ぶり鯉のぼり 南島原 板山良継