句集「良き世」(2)「透析に生きる」(宮本巧)

 5/9、発行者の鴛渕和明さんから購入し、その夜一気に書写し終わりました。

◎先ず前半「透析に生きる」宮本 巧

 随所に句に沿いデフォルトされた様々な写真が入っていますが、上の、右側の写真は巧さんが生まれ育った鷹島へ通じる大橋。(竣工は2009年だから巧さんが居られる頃は橋はまだ無くて本土へは船でしか来れなかったでしょうね)。

 やはり表題にある通り、透析の句が多い。巧さんは、1日おきに4時間の透析を15年間続けられて来られたというから、生活の大半が透析と言っても過言ではないほどのすさまじさであったようだから当然のことでしょうね。


1 透析の片手で拝む原爆忌 

 2019/8/31、西日本新聞「長崎文化」(現在は「ながさき読者文芸」)にて西山常好先生に特選一席に選ばれた句です。その時の新聞は↓

https://ameblo.jp/kawaokaameba/entry-12516384327.html

 また方々でよく取り上げられた句です。

12 透析の首巻しての長時間

35 透析の生死呻吟(さまよ)ふ汗の出し

39 桜東風喉の渇きて透析日

45 春寒の透析する日指青し


 また当然のことながらその闘病生活を支えてきた奥様に対する気持ちを詠んだ句も多い。

10 バス待ちの手をさしのべし懐炉かな

 手を「さしのべし」だから、懐炉を入れた奥様のポケットに手を入れた、ということ。仲の良いお二人のお姿が目に浮かぶようです。

20 露の世は伴侶現れ良き世なり

21 咳込んでいる妻の顔覗きけり

23 悴める手で妻の手を取りにけり

36 妻看病へ霧の中より通ひけり

42 春雨や傘もたずして妻帰る


 その他の巧さんの句より。

3 病みてなほ俳句を作る子規忌かな 

4 高々と四代目なり鯉幟

5 引出しの児の写真集小鳥来る

13 テラスにて井戸端会議日向ぼこ

16 島訛忘れぬ友とおでん酒

22 冬枯やギシギシ青く残りけり

25 初夢や何にも見ずによき目覚め


※句集「良き世」(3)「それから」(宮本由美子)に続きます。