![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240506/09/kawaokaameba/01/60/j/o1080087615435070682.jpg?caw=800)
★春雷や史記に非情の王のあり 東彼杵 沖永愼吾
(評注)「史記」は紀元前に完成した中国の正史で、王や武将たちによる華麗なる国内の興亡を記す。
★舌を出すアインシュタイン春暑し 長崎 入口弘德
(評より)この頃の春の変な暑さに、あの写真を思い出したのだ。
★花桐や歩み去る母かぐはしき 長崎 塩田ひさを
(評)キリは高貴な感じの紫色の花をたくさん付ける。その花に背を向けて去る母は香るような。
★花冷や微光を放つ注射針 西海 楠本シヲリ
★春深し海女小屋にある聖書かな 佐世保 森 誠
★行く春や書斎に父の金時計 雲仙 尾崎春美
★鉄棒に下がる子の影夕桜 佐世保 相川正敏
★赤錆の破れ梵鐘や花の雨 長与 三河祥子
★古家の解かれし跡や初燕 長崎 立木由比浪
★隠し味の嘘ひとつまみ花の宴 長崎 三宅三智夫
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★明易し夢の二幕に鳥の声 佐世保 萩山義人
★木洩れ日や沢蟹と吾子たわむれて 長崎 田中よし子
★若布刈る浮灯台の点るまで 長崎 島崎日曻
★サクサクと白菜切りて落ち着きぬ 佐世保 川口栄子
★花散りて磯の香匂ふ海辺町 長崎 桑原和好
【選者吟】駈ける笑う転がる子らよ花吹雪
◎歌壇 寺井順一選
★被爆せる母娘に水をやるために再び戻る白昼の夢 西海 原田 覺
(評より)原爆の記憶は夢にまで現れるのだろう。水を求める肉親の悲痛な声が聞こえる…。
★「ありがとう」花見の人ら掃除婦の我に声かけ帰りてゆけり 松浦 長谷智香江
★一隅に新聞雑誌の積まれおり数年前まで亡夫の定位置 長崎 渡辺英子
★目標のねんりんピック近づきて友のクロール常より速し 大村 福谷健吉
★パソコンで疲れたる眼を庭にむけ花海棠の色に癒さる 佐世保 小山雅義
★今日もまた穏やかな時をありがとう抗がん剤に挨拶ひとつ 南島原 末吉貴浩
★出揃った麦穂の直立姿よく背筋ピピッと老いを忘れる 雲仙 中村澄子
★「こけるなよ」面会終えて帰る吾に声かけくるる入院の夫 五島 都々木邦子
★クレーン来て山畑に立てた武者幟 見上げる空は青く輝く 諫早 井手美恵子
★始めがあれば終りがあると言いし人春陽の沈む刻に逝きたり 松浦 松永 進
★思い切り断捨離するも日の経てばまだ使えると袋を開く 雲仙 酒井良美
★新しい緑に変わる樹々が揺れもうすぐ五月私の月だ 佐世保 山崎ひとみ
★たまさかの施設訪問の歌声に昔をしのび涙する人 大村 辻 利雄
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