4/29長崎新聞郷土文芸(1)俳壇・歌壇。

◎俳壇 髙永久子選

★象を曳く園児も仏子花祭 佐世保 相川正敏

★朧夜や秘密の箱につげの櫛 長崎 入口靖子 

 (評より)人知れず入れておく秘密の箱、つげくしのの由来が知りたい。

★歯科医師の白き鼻髭三鬼の忌 長崎 入口弘德

 ※4月1日(1962年)。61歳。

★一人では貼れぬ湿布や山笑ふ 南島原 森野章子 

★春眩し娘の初めてのイヤリング 西海 植村京子 

★逃げ水や無沙汰の友のうしろ影 南島原 川口誠一

★嬰児に欠伸を貰う春の暮 西海 原田 覺 

★花霞退職願い懐に 五島 松本隆司 

★菜の花の雨に輝くミサ帰り 佐世保 川口栄子

★春北風(はるならい)汐吹岩の汐柱 平戸 本川 誠

★多言語の列車案内春休み 島原 林 倫子

★山笑ふスマホの人に道譲り 長崎 三宅三智夫 

★あと先に鶯鳴けり里の道 五島 中村敏子 

★流れつつ色変えてゆく石鹸玉 佐世保 小山雅義 

★地元紙に春筍包み送りけり 長崎 成瀬至楽

★一本の木切れに委ね花筏 佐世保 倉本健治

【選者吟】清和なる小便小僧のしぶきかな


◎歌壇 立石千代女選

★砂浜に寄せくる波の優しさに素足になれりああ春だなあ 大村 眞弓昭次

★君あらばきっと満点くれたはず少し甘めの出汁巻き卵 西海 原田 覺 

★子どもらは舞台を埋めてお箏弾く「さくら」の曲の膨らみて満つ 島原 三浦一正

★三度目は聞き返せずに頷きて花見の円座にみんなと笑ふ 佐々 山本久子 

★分刻み生活だった吾今はあくを取りつつあんこ炊きおり 長崎 平野純子

★デイケアに送迎される母の顔行きも帰りもよそ行き笑顔 長崎 桑原和好

★三月の別れと出会い知る桜新たな夢の応援花となる 諫早 馬渡壽人

★友送る告別式に流れたるティアズ・イン・ヘブン涙を誘ふ 雲仙 前田泰隆

★ガタゴトとリズム打つ音に眠気さす路面電車は走るゆりかご 長与 相川光正

★今年まで今年までかと想いつつ桜見物九十二歲 長崎 峯信枝

★覚束ない唄くり返すうぐいすを子の成長に重ねつつ聴く 雲仙 中村澄子 

★愛犬は施設で暮らす妻さがしさびしげに吠え我にまつ わる 長与 中小路弥太郎


◎柳壇 永石珠子選 題「駆ける」

★被災地へ無欲の汗が駆けつける 長崎 西畑伸二

★受けた恩駆け出しの頃忘られぬ 大村 福谷健吉

★被災地へ駆け付け支援ボランティア 大村 一瀬義之

★昭和平成令和を駆けて喜寿となる長崎 中島まゆみ

★救助犬と危険現場へ駆けつける 長崎 横山秋子 

★駆け出しへネットの仕事任される 波佐見 山内禮次郎 

★逆境時へ負けずに駆けた母の意地 長崎 柴田教子 

★駆け抜ける我が子へカメラ親必死 長与 渡部克子


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◎「グループ作品」「歌・句誌」より