4/28朝日俳壇・歌壇。
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★こんな世にこんな世だから蝶生る(大崎市)笠原直子
【評】人間がごたついている世に生まれる蝶は哀れ? 救い?
★桜餅口に含めば涙味(福岡県鞍手町)松野賢珠
【評】桜餅の皮に込められた一縷の塩味、それが人間の涙味とは。
☆窓外の雨が女神や大朝寝(船橋市)斉木直哉
※長谷川櫂共選。
★死に頃とこの頃思ふ春の蠅(高砂市)小柳献爾
★国沸かす皇女一人の新社員(宮城県山元町)山田庸備
◎長谷川櫂選
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★桜島噴く霾天の真ん中へ(垂水市)瀬角龍平
【評】堂々たる一句の構え。
★黄金の腕の仮寝やみどりの日(東京都文京区)片岡マサ
★花の杜幾多の男征かせたり(一宮市)岩田一男
【評】この神社から出征して帰らぬ人、帰った人。今は静かに花の中。
★摺粉木の音入魂の木の芽和(伊万里市)萩原豊彦
★春が来た歩ける我が身畑に立つ(常陸太田市)赤須敏美
★翌年は閉校一人入学す(札幌市)藤林正則
◎大串章選
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★茶寿の母背負ふ軽さや啄木忌(京都市)室 達朗
【評】108歳の母を背負い、「たはむれに母を背負ひてそのあまり軽きに泣きて三歩あゆまず 啄木」を思う。母を背負って啄木は泣いたが室氏は諾っている。
★追ふ蝶も追はれる蝶も遊びをり(多摩市)金井 緑
★海苔舟の棹の操る光かな(静岡市)松村史基
★故郷に住みて老いゆく夕桜(玉野市)北村和枝
◎高山れおな選
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☆このかみがだれかのウィッグになるんだと三年のばしたかみ切りおえる(成田市)かとうゆみ
※馬場あき子共選。
★人間の形に白き布巻かれ遺体がガザの瓦礫に並ぶ(観音寺市)篠原俊則
★ウクライナの攻撃やめぬプーチンがテロの死者には十字切りをり(浜松市)松井 惠
★舞鶴の入江に育ちし牡蠣殻を貝灰にして花壇にちらす(舞鶴市)新谷洋子
★寄す波は海より優し引く波はなほなほ優し春の琵琶湖よ(加古川市)冨家新子
★恐竜の名前に必ず付く末尾「サウルス」の意は「蜥蜴」と知りぬ(舞鶴市)吉富憲治
★もう二回ゴジラを観たという父を案外知らない知ってるようで(富山市)松田梨子
☆「お」と打てば「お世話になっております」と出てくるあわれ職場パソコン(西条市)村上敏之
※馬場あき子共選。
◎馬場あき子選
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★壮年と老年の間(あわい)さりげなく「年配」という言葉があった(大和郡山市)四方 護
★春の暮亀も田螺も鳴いてゐるその声聞こゆる歌人俳人(名古屋市)山守美紀
★店主泣き客も泣きつつ手を握る輪島の出張朝市の店(観音寺市)篠原俊則②
★父母なき子、子のなき父母の増えつづくガザに今宵も月まるく冴ゆ(京都市)小池ひろみ
★尊富士の優勝に沸く津軽人「けっぱった」とう訛りの熱さ(仙台市)沼沢 修
★薄氷を割つて踏み込む苗代田拝むごとくに種籾をまく(匝瑳市)椎名昭雄
◎佐佐木幸綱選
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★慎ましい暮らし晒して古民家が抗いながら壊されてゆく(福岡県)末松博明
★自転車屋本屋仕出し屋文房具屋閉じた店見て歩くふるさと(滋賀県)木村泰崇
★肋骨を折る気で押せと講師言う息子くらいの人形を指し(東京都)富見井高志
★遡る白波の立ち立ち止まぬ春の嵐の四万十河口(四万十市)左山 遼
★パイナップル生まれて初めて切っている長い旅路をねぎらいながら(富山市)松田わこ
★咽頭を病んでも夫は同郷の尊富士関に声援をおくる(盛岡市)山内仁子
◎高野公彦選
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★島にきて初めて夫と共にする畑仕事と料理と散歩(東京都)三輪裕子
【評】作者の住所は三宅島。移住して新しい生活を楽しんでいるのだろう。
★新人は三月(みつき)経たずに腰痛め急募途切れぬ介護の現場(酒田市)朝岡 剛
★花の下にて西行のごと逝きし前登志夫の忌山桜咲く(水戸市)中原千絵子
★大宰府の梅は楷書の、長谷寺のしだれ桜は草書の薫り(箕面市)大野美恵子
★陽光(サンシャイン)の燦々そそぐ獄庭に鳩のカップルが交わす口づけ(アメリカ)郷 隼人
★左きき用のグローブはめてみた校庭に出て「野球しようぜ」(奈良市)山添聡介
【評】谷翔平寄付のグローブか。