4/27西日本新聞「ながさき読者文芸」。
◎俳句 籏先四十三選
★莫逆の友の棺に野春菊 諫早廣川 豊
※「莫逆の友」=ばくぎゃくのとも。心に逆らうものがまったくないほどの、非常に親しい友達。親友。「莫」は、莫(な)いこと。「ばくげきのとも」とも読む。
【評】極めて親しい友がみまかった。その棺に野春菊(のしゅんぎく。都忘)を手向けた。「野春菊」の花言葉は「しばしの別れ」。そのうち俺もいくからなと友への哀悼。
★腸(はらわた)に粥の染み入る春の風邪 佐世保 渡久地弘子
★春眠や読書の頁行き戻り 佐々 林 エイ子
★黄砂来るシルクロードのロマン乗せ 佐世保 松永愛子
★たんぽぽや少し大きなズック靴 佐世保 詫間初美
★追憶や余生渦巻く花いかだ 佐世保 川原豊子
★春昼や回り始めし観覧車 長崎 成瀬至楽
★振り向ひて牛に手を振る牧びらき 雲仙 伴 信彦
★校長の話長いと入学児 佐世保 森 誠
★在所には血縁多し山ざくら 島原 野田耕起
★葉桜や週に一度のリハビリに 南島原 田中よしみ
★桜貝乙女のごとく拾いけり 佐世保 松崎伸苑
★休息日作ってくれる春の雨 壱岐 深見秀子
★海までの菜の花道や普賢岳 諫早 石田志帆
★純潔は死語となりけり春の月 対馬 神宮斉之
★乳のみ児を山端に寝かせ茶摘かな 南島原 松浦せつこ
◎歌壇 黒田邦子選
★トラックの荷台にゆっくり着地して農薬散布のヘリは憩えり 松浦 金子寿美
★あたたかき陽の入る部屋は待ちている月に一回外泊の母を 壱岐 町田典子
★籾殻の中から買いしあの頃の卵たしかに重さありたり 佐世保 小山雅義
★核兵器今なお増えて複雑な思いで観たる「オッペンハイマー」 佐世保 弓削久美子
★目も見えず外界さまよう病室に母はひとりで「桃太郎」歌う 松浦 前田サツキ