4/20西日本新聞「ながさき読者文芸」

◎俳句 籏先四十三選

★(一席)草焼きの火脚走りて沼に果つ 佐世保 小山雅義

 【評より】野焼きは土地の維持管理を目的として古今行われてきた春の風物詩。

★(ニ席)菜種梅雨今日もどこかで戦の火 佐世保 牛飼水鳥

★(三席)幻の巷よりきて桜花 諫早 関山悦子

 【評】この世はまぼろしのようにはかないものである。生死の境目を抜け、目に映ったものは満開の桜であった。

楤(タラ)の芽や五足の靴の径巡る 諫早 安浪加余子

 ※与謝野寛鉄幹、北原白秋、平野万里、木下杢太郎、吉井勇による九州紀行「五足の靴」の旅の跡(石碑)が九州北西部各地にある。

佐世保にもあります↓
★写経の手ふと止まりたる初音かな 佐世保 馬場定水

★銅鑼の音に春の別れのテープ舞ふ 島原 野田耕起

★母と来し女人高野や百千鳥 佐世保 相川正敏

★黒髪に戻し就活春の道 島原 坂本優美子

★引き潮の橋をくぐるや花筏 佐世保 五月女 守

★筆おろす春なにもかも新しき 諫早 森 裕子

★のどけしや振り子時計の昭和音 平戸 田地 花

★春南瓜切れてうれしき夕餉かな 佐世保 村上美佐子

★山の子の砂山つくる春の磯 雲仙 伴 信彦

★廃線の自転車ロード花菜風 南島原 松浦せつこ

★麦青む車窓に展く夫の里 佐世保 松崎伸苑

★たんぽぽや兄のおさがりランドセル 対馬 神宮斉之

★職了へて通ふ大学さくら咲く 大村 松永喜美子

★茶畑のほのかに薫る卯月かな 佐世保 豊村正人

★子等送る島の港や風光る 壱岐 深見秀子


◎歌壇 久保美洋子選

★姉が認知症に・・いつか私も・・その時はケセラセラとて子に託さんか 大村 松永喜美子 

 【評より】誰が、いつ、認知症になるのかは判らない。この作者のように、覚悟を決めておくことが大切なのかもしれない。 

★わが庭のチェリーの苗木につぼみつきて五輪咲きたり開花宣言 佐世保 松崎伸苑

★爺の郷を孫の脳裡におさめんと幼連れ出す桜(はな)散るまえに 諫早 平松 茂

★夜ごと夜ごと妻は足攣り痛みおり漢方きかず揉みてやるなり 佐世保 小田賢司

★怪力で頭脳進化の猪に生産意欲までも削がるる 松浦 志水和子 


◎諧句 松下冨士子選

★旧姓が出ぬ中学のクラス会 対馬 神宮斉之

頑張った孫も今日から社会人 壱岐 砥綿 満

★ふる里の香りを詰めて荷を送る 島原 山口 洋

★つわぶきにあと一味の思いやり 島原 山口光子