◎グループ作品、歌・句誌、より
★ツンドラに君の名いまも桜咲く 吉田 篤
★八十路来る大根スパッと切つてみた 山本桂子
★入学の祝い高めのシャープペン 山口靖子
(まつら俳句会)
★初鏡衿元正し紅を引く 宮木久代
★二度三度畝行き来して大根引 大内弘美
★水求め啼く牛能登に春を待つ 山口千代子
(花鶏つむぎ句会)
★豆撒や夢すてつつも夢描き 桑田峰代
★喰積や二人暮らしの塗の箸 島 典子
★こまごまと訊く方言や植木市 立石勢津子
★ジャズ聴けば体の揺るる春隣 西 のぶ子
(風羅坊句会)
★春一番家中に砂まきちらし 鳥井國臣
★謂れなき罰の如くに花粉症 川崎あてね
★山芽吹く父の気配に耳すます 松尾香奏水
★弥生月山がふくらむ海ふくらむ 中尾よしこ
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(長崎番傘川柳会)
★微睡みの母子を包むシューベルト 松本ひとみ
★絵日記が自作自演の自分史に 後田直美
★考える力を奪うファンタジー 志方智外
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240415/07/kawaokaameba/6e/27/j/o1080086215426051393.jpg?caw=800)
(太白2月号)
★先頭の鴨ひと鳴きし着水す 辻田祥子
★喪のあけて主ひとりや萩の家 矢島利明
★柊の花と香の待つ我が家かな 酒井由美子
★水仙のすつくすつくと勢揃ひ水 高柳昌子
(杏長崎2月号)
★冬ざれの列島隠す雲の帯 深野敦子
★生家とは暗くて安しとろろ汁 朝長美智子
★火縄銃秘め図書館の冬構 並川友子
★白壁の影美しき柿簾 米光徳子
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(湾2月号)
★風化すすむ丸き露座仏枇杷の花 永福倫子
★聖廟に揚琴(ヤンチン)の音や冬うらら 田中伶子
(同人2月号)
★豊年や空ゆく雲のあらそはず 山田 京
★師系ひとすぢ立冬の春径忌 浜崎芳子
★麦とろろ作法はいらぬをと こ飯 鶴田弘子
★自動販売機にもぐりこむ猫冬どなり 藤瀬惠美子
★梵鐘の余韻に鳴くや秋鴉 前川みつこ
(万象2月号)
★盆路の帰りの遠し石畳 丸本祥夫
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(馬酔木2月号)
★約束のある嬉しさや石蕗の花 中山朝子
★寒椿肩寄せ合ふやに生きて来し 中尾和枝
★玄界灘一気に暮れて時雨たり 小林 筍
(花鶏1・2月号)
★秋雨や独り夕餉の手くらがり 栗山よし子
★ばつたんこ病気自慢の弾みけり 出田量子
★木洩れ日を貪るやうに石蕗の花 中尾和枝
(海原1・2月号)
★月の夜や過ぎゆくものはひらひらす 前川弘明
★糸蜻蛉幸福だった一年生 横山 隆
★神無月統計が消す個のワタシ 江良 修
◎短歌(うた)ありて
★孫の撒く桜吹雪を夫は見る十五分間だけの面会 玉里みどり
満開の桜を見上げるとき、桜吹雪の中を行くとき、えもいわれぬ感情が湧きあがることがある。美しさとはかなさが人生に重なるからだろうか、不思議な力を桜は持つようだ。「大好きなおじいちゃんに桜の花を見せてあげたい」。面会の日、たくさんの花びらを集めておじいちゃんの前で花吹雪にする孫、それを見上げる夫、そしてそのふたりを見守る作者。下の句からは、15分しかない面会の切なさ、もどかしさ、さらには憤りまでも読み取れる。それと同時に、家族の愛情がぎゅっと凝縮された15分間だけの奇跡、と読むこともできるだろう。「新介護百人一首2023」より。(あすなろ・平山和美)
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