4/14長崎新聞郷土文芸(2) グループ作品、他。

◎グループ作品、歌・句誌、より

(律俳句会)

★ツンドラに君の名いまも桜咲く 吉田 篤

★八十路来る大根スパッと切つてみた 山本桂子

★入学の祝い高めのシャープペン 山口靖子

(まつら俳句会)

★初鏡衿元正し紅を引く 宮木久代

★二度三度畝行き来して大根引 大内弘美

★水求め啼く牛能登に春を待つ 山口千代子

(花鶏つむぎ句会)

★豆撒や夢すてつつも夢描き 桑田峰代

★喰積や二人暮らしの塗の箸 島 典子

★こまごまと訊く方言や植木市 立石勢津子

★ジャズ聴けば体の揺るる春隣 西 のぶ子

(風羅坊句会)

★春一番家中に砂まきちらし 鳥井國臣

★謂れなき罰の如くに花粉症 川崎あてね

★山芽吹く父の気配に耳すます 松尾香奏水

★弥生月山がふくらむ海ふくらむ 中尾よしこ

(長崎番傘川柳会)

★微睡みの母子を包むシューベルト 松本ひとみ 

★絵日記が自作自演の自分史に 後田直美 

★考える力を奪うファンタジー 志方智外

(太白2月号)

★先頭の鴨ひと鳴きし着水す 辻田祥子

★喪のあけて主ひとりや萩の家 矢島利明

★柊の花と香の待つ我が家かな 酒井由美子 

★水仙のすつくすつくと勢揃ひ水 高柳昌子

(杏長崎2月号)

★冬ざれの列島隠す雲の帯 深野敦子

★生家とは暗くて安しとろろ汁 朝長美智子 

★火縄銃秘め図書館の冬構 並川友子

★白壁の影美しき柿簾 米光徳子

(湾2月号)

★風化すすむ丸き露座仏枇杷の花 永福倫子

★聖廟に揚琴(ヤンチン)の音や冬うらら 田中伶子

★水仙や島の教会守る尼僧 城臺文江

(同人2月号)

★豊年や空ゆく雲のあらそはず 山田 京

★師系ひとすぢ立冬の春径忌 浜崎芳子

★麦とろろ作法はいらぬをと こ飯 鶴田弘子

★自動販売機にもぐりこむ猫冬どなり 藤瀬惠美子 

★梵鐘の余韻に鳴くや秋鴉 前川みつこ 

(万象2月号) 

★盆路の帰りの遠し石畳 丸本祥夫

(馬酔木2月号)

★約束のある嬉しさや石蕗の花 中山朝子

★寒椿肩寄せ合ふやに生きて来し 中尾和枝

★玄界灘一気に暮れて時雨たり 小林 筍

(花鶏1・2月号)

★秋雨や独り夕餉の手くらがり 栗山よし子

★ばつたんこ病気自慢の弾みけり 出田量子

★木洩れ日を貪るやうに石蕗の花 中尾和枝

(海原1・2月号) 

★月の夜や過ぎゆくものはひらひらす 前川弘明

★糸蜻蛉幸福だった一年生 横山 隆 

★神無月統計が消す個のワタシ 江良 修


◎短歌(うた)ありて

★孫の撒く桜吹雪を夫は見る十五分間だけの面会 玉里みどり

 満開の桜を見上げるとき、桜吹雪の中を行くとき、えもいわれぬ感情が湧きあがることがある。美しさとはかなさが人生に重なるからだろうか、不思議な力を桜は持つようだ。「大好きなおじいちゃんに桜の花を見せてあげたい」。面会の日、たくさんの花びらを集めておじいちゃんの前で花吹雪にする孫、それを見上げる夫、そしてそのふたりを見守る作者。下の句からは、15分しかない面会の切なさ、もどかしさ、さらには憤りまでも読み取れる。それと同時に、家族の愛情がぎゅっと凝縮された15分間だけの奇跡、と読むこともできるだろう。「新介護百人一首2023」より。(あすなろ・平山和美)

★他人より自分同士を比べたい過去に負けたら過去を褒めよう アダムス理恵

 米国在住の「心の花」会員の作品である。時に人間は、無意識に自他の比較をなし、優劣の感情のうちに差別や偏見をめばえさせる。このことの愚かさを作者は知っている。だが、自分の人生の評価は自らが行えばそれで十分なはず。誰の人生も良い時ばかりではなく、むしろ納得のいかないことの方が多い。そのような時にこそ、輝いていた頃の自分を思い出し、心をリセットして再び前を向いて生きていこう。この歌には、そのようなしなやかな意思と希望に生きる者の若さがある。4月にふさわしい歌かもしれない。 (心の花・丸山稔)


◎一面「きょうの一句」

「きょうの一句」はこの後のページに一週間分を投稿します。

◎俳句はいま
「俳句はいま」も読みやすいようにしてまた投稿致します。