4/14長崎新聞郷土文芸(1) 俳壇・歌壇・柳壇。

◎俳壇 前川弘明選

★囀りの溢れこぼるる被爆楠 長崎 三宅三智夫

★啓蟄や地球の中の胎動す 長崎 入口弘德

★すみれ野に足跡残す鼓笛隊 長崎 入口靖子

★天心の月を篝に猫の恋 佐世保 相川正敏

★髪染めて時引きもどす朧の夜 長崎 森田のぞみ

★春潮や渦の下にも山河あり 佐世保 倉本健治

★童心で渡る飛び石春の川 諫早 西宮三枝子

★彼の世への扉のあらむ春の闇 西海 田川育枝

★啓蟄や地上のけもの姦しき 長崎 塩田ひさを

★一時の命を惜しみ花の宴 長崎 高谷忠昭 

★抱かれし幼いつしか青き踏む 佐世保 福田信賢 

★中日の上流気流鳶の笛 長崎 立木由比浪 

★被災地に新たな社木の芽張る 島原 福本かつ子 

★子を偲ぶ嘉代子桜が咲く季節 長崎 柏木茂紀

 ※嘉代子桜については↓をご覧下さい。https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%98%89%E4%BB%A3%E5%AD%90%E6%A1%9C

★閉校の家族と歌う卒業歌 雲仙 中村 忍 

【選者吟】花吹雪く岩頭に立つ少年に


◎歌壇 寺井順一選

★ちりぢりに親兄弟は住みおれど大空はひとつ春の夕雲 長崎 島崎日曻

★外壁を張り替えねばと思いつつ父の手の跡消えるが悲し 長崎 平川ミツ子 

★亡き妻の姉が旅立ち雲仙にあの日と同じ瑞雲かかる 諫早 金子哲也

★春彼岸祀る人なき荒れ墓の苔に隠れし墓銘読み解く 諫早 野崎治行

★風頭山(かざがしら)龍馬の銅像仁王立ち未来見据える志士の眼差し 長与 竹馬亮二 

★つぼみ成す牡丹に惹かれ求めたり母植ゑし場所に二代目を植う 雲仙 前田泰隆

★張り替えし障子を染めて春の陽は居間の隅まで光を届く 佐世保 小山雅義 

★被爆地に永井桜は今もなお花を咲かせて平和を希う 長崎 柏木茂紀

 ※永井隆博士は「原子雲の下に生きて」の本の印税をもとに、桜の苗木1200本を山里小学校、純心女子学園、浦上天主堂、病院、道路などに植えた。

★時化過ぎて凪ぎたる朝の港内にエンジンの音ざわめき響く 長崎 桑原和好

★会いたくも叶わぬ思い遠桜慰むごとき雉子の遠鳴き 五島 眞鳥謙吉 

★多良岳の裾にたなびく朝霧の山襞のぼり竜になりけり 雲仙 山本博子

★「ねえどうして」亡父になんでも聞いていた辛党なのに返事は甘党 長崎 宮崎あや

★春くれば玉ねぎの葉は折れ伏して自ら知らす収穫のとき 諫早 執行興一

★怪我に堪え記憶に残る優勝を掴み取りたる土俵の笑顔 長崎 高西芳弥

★大銀杏結えない平幕尊富士百十年ぶりの快挙成し遂ぐ 長崎 工藤洋六 

★路線バス廃止となりし過疎の村老いの暮らしはますます窮す 大村 平松文明

★天高く真白き鶴の北帰行かの満州の引揚げ想う 長崎 汐碇博紀

【選者詠】空しさの湧きくるならむ焼け跡に並びて立てる老夫婦あり


◎柳壇 井上万歩選 題「食」

★健やかに育てと願うお食い初め 南島原 森下政子

★人生の最期の食は家の味 長崎 作本耕一

 (評より)施設の食事がいかにおいしくとも、わが家の麦飯に勝るものはない。

★五十年妻の料理へ感謝する 大村 一瀬義之

★帰省子の好物並ぶ春休み 長崎 森本志真子 

★寝食を共に過ごした友が逝く 長崎 井手誠二


以下はページをあらためてまた投稿します。

◎短歌(うた)ありて
◎俳句はいま
◎一面「きょうの一句」