4/13西日本新聞「ながさき読者文芸」

◎俳句 籏先四十三選

★花冷や回覧板がぶら下がる 佐世保 森 誠

★復興に漲る力ひこばゆる 諫早 廣川 豊

 【評より】「蘖(ひこばえ)」=切り株や木の根元から出る若芽。

★春一番少女の髪をもてあそぶ 南島原 末吉貴浩 

 【評より】春一番に少女の髪がみだれ、慌てている姿をよくとらえた。

★群れ咲いて寂しがり屋の鼓草 佐世保 詫間初美

 ※「鼓草」は、たんぽぽ。

★無住寺の庭飾りたる花蘇枋 佐世保 小山雅義

★行く春の冗舌やまず空元気 松浦 舩原清洋

★タコ焼きのにほひ誘ふ春の市 島原 野田耕起

★テープ舞ひ汽笛の別れ卒業子 長崎 成瀬至楽

★春の虹港へ向かふ一輪車 西海 楠本シヲリ

★見送れば後姿のかげろへり 諫早 石田志帆

★満開の花の下にて詠む一句 大村 野田昌治

★肩書の欲しき齢よ四月馬鹿 諫早 安浪加余子

★師弟して臨む脳トレ山笑ふ 佐世保 太田恵子

★待望のお砂場デビュー園うらら 島原 坂本優美子

★老い夫のめがね新調春うらら 佐世保 松崎伸苑

★手に杖を句材さがしや花日和 大村 串崎洋一

★閉校の校歌碑除幕さくら冷え 西海 森 保子


◎短歌 黒田邦子選

★つつがなく蛇口に水の出る幸よ再生能登へ思いを寄せる 佐々 法本安子

 【評】無くなって知る「水」の有難さ。能登半島地震では今でも水に不自由な地域があります。 

★放課後の音楽室にピアノ弾く寡黙な生徒 雄弁な指 佐世保 小山雅義

★時々は君としていたハイタッチ逝ってしまって遺影に触れる 佐世保 鶴田竹一

★草取りをしていて嫁菜摘みくれば妻は喜び嫁菜飯炊く 平戸 壽福院 亮

★病室の窓に香れる木犀にこれも見舞のひと時となさむ 松浦 金子寿美 

★遠く住む従兄からのお礼状手書きの文字が息をしている 諫早 花岡壽子 

★放任のレモン樹の果の色づけばその時だけの手入れをなしぬ 諫早 平松 茂

★勝ち負けに拘る老いのスポーツは刺激になりていよよ長生き 平戸 古川敏郎 

★早馬のかけるが如き世の進歩負けてたまるかもうすぐ白寿 佐世保 峠 マサノ 

★大学へ出発の孫おくる朝まぶしき日ざし晴ればれとして 佐世保 小田美惠子

★等伯の生れし七尾へ行く夢も途絶えぬ今年の能登半島地震 佐世保 松崎伸苑

 ※松崎さんは日本画家。


◎諧句 川田金太郎選

★開花して鳥の囀り増す並木 島原 松本トヨ子

★老いの手が多機能ボタン躊躇させ 諫早 平松 茂

★幼子に元気もらってまた一歩 諫早 松原静枝

★畑仕事急に飛び立つきじ一羽 大村 内田和代

★人生の少し錆びつくレール見え 長崎 溝口健治

★老木の桜の花に励まされ 長崎 小浜 隆

★生きる欲胸の振り子が鳴りやまぬ 佐々 法本安子

★黒煙を吐きハチロクのラストラン 松浦 舩原清洋

★髪の数気になりながら櫛で梳く 松浦 母袋トヨ子

★青春の想い遠くも鮮やかに 西海 上野久美子

★飽食の裏に飢饉の見え隠れ 対馬 神宮斉之

★雷鳴の夢の中までウクライナ 諫早 八田幸世

★微笑んだ母の遺影に諭される 長崎 荒井孝憲

★傷ついた心の修理ペンが縫う 松浦 前田サツキ