小田恵子さん遺句集「菓子工房」(2) 「菓子作る(H25〜)」「冬薔薇(H28〜)」より

「菓子作る」H25〜

★初春や夫の残せし世を生きむ

★人日や手の勘戻る菓子工房

★鶴帰る定年の無き自営業

★お地蔵のバンダナ腹掛け山笑ふ

★逢いに行く為の鬼灯買ひにけり

★MOTER'S DAY と記すワインの届きけり

★梅雨深し淋しき時はパスタ茹で

★ひまわりと書かれしドアが母の部屋

★蚊帳そつとくぐれば母に会へさうな

★夫の忌のあの時の空九月来る


「冬薔薇」H28〜

★黒南風や初めて覗く懺悔室

★天の川涙忘れしはずなのに

★銀漢やわたしに未来ありますか

★商ひに明け暮れ勤労感謝の日

★湯豆腐のことこと音も一人分

★独りとはかういふものか冬木立


(3)「温め酒」H29〜、「しゃぼん玉」H30〜、「陶の風鈴」R2〜に続きます。