4/1長崎新聞郷土文芸(1) 俳壇・歌壇・柳壇。
◎俳壇 吉岡乱水選
★幼子の皓歯目(日?)映し梅白し 長崎 宮崎包子
(評)生え初めた子の純白の歯と梅の花の清らかさが美しい。草田男の「万緑の中や吾子の歯生え初むる」の句ほうふつ。
★自由なる大空めざし物芽出づ 長崎 伊藤ひとみ
(評)未来をはらみながら一斉に大空へ伸び出す物の芽の力強さを「自由なる大空」で象徴して。
★春の水たばしる尼寺の筧かな 佐世保 相川正敏
★岩肌に光跳ね上げ春の水 南島原 末吉貴浩
★点滴の音なきおとや花の雨 雲仙 西田豊子
★うららかや雀のとまる鬼瓦 長崎 高谷忠昭
★山笑ふ新幹線の発車ベル 長与 三河祥子
★パンジーをそつと植ゑ込む妻の指 長崎 柏木茂紀
★朝採りのあおさの砂を噛みあてし 諫早 野崎治行
★耕すや土の声聞く父の耳 西海 有川絹江
★紙雛を折りて賑やか保育園 島原 荒木アヤ子
★浴場のあかりやはらか春の宵 諫早 中島こゆき
★耕や小石を拾ふ父の背ナ 西海 楠本良子
★飛石の一歩一歩に春のこゑ 雲仙 草野悠紀子
★禁教徒守りし禅寺落椿 諫早 安浪加余子
★塔の影ゆらり逆さま水温む 諫早 篠崎ひでこ
★春潮をかき分け進む大漁旗 諫早 杉本伊織
★春の水流れ来るもの皆躍り 平戸 本川 誠
★ひるね猫白いしつぽに落椿 平戸 大浦千惠子
★吾子立ちて一歩踏み出す春野かな 長崎 林田 実
★歌詞忘れハミングとなり山笑ふ 長崎 成瀬至楽
★会ふまでの別れの時や卒業子 諫早 宮本美代子
★押入れに仕舞ひしままの雛人形 諫早 藤林東容
★啓蟄の日を入れて立つ市出店 島原 佐藤美保子
【選者吟】一筋の風の白道雪柳
※「百道」をどう読んだらよいかわかりませんが、地名としては「ももち」。でもおそらくここは、「ひゃくどう」か。百道とは、人々の足跡が東西縦横に交差する様を言った「百の道」から転じた「百道」ではないかと。
★おさな孫に折り方おしえともに折り春風号のひこうき飛ばす 諫早 平松 茂
★臍の緒の入りし桐箱に父の文字薄れうすれて七十五歳 川棚 斉藤敬子
★辛い日には風呂につかってすぐ歌え唱歌「ふる里」とくに三番 西海 中尾美代子
※三番「こころざしをはたしていつの日にか帰らん 山はあおきふるさと水は清きふるさと」。
★味噌汁を独り吸うとき淋しくて悲しくてなぜか腹を立ててる 川棚 中村恭子
★もうこの世に花見に誘う父母はなく吐息のごとくつぼみふくらむ 島原 本多たつみ
★人ごとが我が身となるを知りし帰路医師の言葉が天より落下す 長崎 平川ミツ子