3/30西日本新聞「ながさき読者文芸」

◎俳句 籏先四十三選

★余命無き友卒業の日を共に 諫早 田中道信

 【評より】闘病の学友との別れがすぐそこに迫っている。

★お隣りに嬰の泣き声燕来る 西海 森 保子

 【評より】未来へと希望がふくらむ明るい句。

★海よりの風と遊びて葱坊主 佐世保 松崎伸苑

 【評】潮風を浴びて育った立派な葱坊主。ふるさとは紺碧な海と磯の香に囲まれたところだったのですね。

★百選の棚田抱き締む春夕焼 松浦 舩原清洋

★草千里春の炎が走りゆく 佐世保 牟田一彦

★囀りやこの一声にかける恋 諫早 安浪加余子

★体調の徐々に回復水温む 平戸 古川敏郎

★離農帰農悲喜こもごもの峡の春 対馬 神宮斉之

★春時雨回転木馬待つ子かな 佐世保 森 誠

★図書館はしじま眼下に花の雲 佐世保 川原田安子

★ベランダに一足先のさくら草 長崎 溝口健治

★春泥にわざと踏みいるガキ大将 島原 野田耕起

★漏れてくる内緒話や春障子 島原 坂本優美子

★春燈や鉛筆書きの農日記 西海 楠本シヲリ

★春光やほのかに笑ふえびすさん 大村 兵庫省三郎

★寝仏めく遠山の影鳥帰る 佐世保 相川正敏

★部活終え露店巡りや春祭 佐世保 渡久地弘子

★おしやべりは残る人生紫木蓮 佐世保 五月女 守

★なにげなき一句に選評暖かし 佐世保 太田恵子

★新聞の投句済ませて春炬燵 佐世保 馬場定水

★引き潮の海のアオサが吾を呼ぶ 壱岐 深見秀子


◎歌壇 黒田邦子選

★英霊の合祀されいる霊園にふく木枯らしは父の声かも 佐世保 小山雅義

★デイケアの百二歳の誕生会サラダの苺は最後に食べよう 大村 辻フミヨ

★百二歳に負けちゃおれない投稿者われまだまだと見習う八十路 松浦 前田サツキ

 ※まるでツジフミヨさんの歌と呼応するような歌ですね。

★初めての回る寿司屋で好物の海老を逃して嘆息の祖母 対馬 神宮斉之

★栽培の椎茸どんこが頭出すひそかに春の陽気を浴びて 平戸 壽福院 亮

★ひと粒の米も茶碗に残すなと教えし親がわれに棲みつく 長崎 塩塚理人 

★十余年闘病のすえ従妹ゆく雲雀のように自由にとべよ 佐世保 弓削久美子 

★筆先にちいさな春をひそませてふっくらえがく里の野山を 諫早 花岡壽子 

★春野菜の竹の子、セロリ、菜の花と今日の献立夫の当番 佐世保 松崎伸苑


◎諧句 川田金太郎選

★春場所が希望届ける能登の地に 南島原 板山良継

★懐の深さかみしめ母思う 諫早 松原静枝

★果樹苗木植えて遠い目孫のため 佐世保 松崎伸苑

★折々に亡母が顔出す知恵袋 佐々 法本安子

★孫子等の近況伝え墓参り 壱岐 植村多恵子

★よく持った水と油の夫婦仲 壱岐 砥綿 滿

★また来てと土産手料理持たす母 壱岐 市岡妙子

★風つかむ稚児のにぎにぎ春の土手 対馬 神宮斉之

★四股ふんで睨み利かせる山と海 諫早 八田幸世

 【評より】関取を山と海で表現。

★胸飾る花誇らしげ卒園児 佐々 衛藤佳奈子

★蛇口から出る水感謝能登思う 平戸 萩原博美