3/22山梨新報「しんぽう文芸」山梨の句友、田辺義樹さん報。


◎歌壇 祢津達子選

★早春の寒き庭辺に凛と咲く純白の海香りにほこり 南アルプス 山久豊寿

★独り鍋湯気の向こうの思い出に語りかけつつ一人のむ酒 甲府 小尾康弘

★凍てついた雪をガシガシ踏み崩し戯れよろけ登校の児等 市川三郷 片田佐恵子

★冬の陽のさす塀の上三毛猫が背の毛たたして大きな欠伸 甲府 丸山洋子 

★それぞれの場所の決まりて鎮もれる本の居所私の居場所 富士吉田 中村 蓮 

★池の端わずかにのこる春の雪彼(か)の内緒ごと消えずにおくれ 富士吉田 樹 俊平

★日常や仲間等無事に帰れよとカエルの絵を描く被災地の子等 甲府 高瀬孝人

★職人の作りしバッグ年を経て温もりの有り程良き丸み 甲府 天野 正

★始めたり春の菜園耕して土の感触心ふわふわ 甲府 広瀬八千子

★卵形の実むすびつつ蝋梅は春謳うがに黄花雫せる 甲府 櫻井 稔

★一枠を決める東京マラソンの「西山」切なし四○秒差 富士吉田 武田妙春

★日溜まりに毛繕いする飼い猫がガラスに映る鳥に驚く 埼玉 所 富子

★本当の事かどうかは分からぬが祖母の話は聞いて遣らねば 埼玉 伊藤一男

★炬燵出て立った理由は何だっけ天井仰ぎおでこをたたく 甲斐 松田健嗣

★依頼され初午祭りの小太鼓をはじめゆっくりリズム良く打つ 甲府 小澤武雄

★三十年歌の仲間と交わしたる手紙溜まれり菓子箱一つ 中央 前田良一

★枝いっぱい咲き誇りいる白き梅香り溢れる春の訪れ 富士河口湖 堀内智美

★朝焼けの南アルプス輝きて際立ちみゆる甲斐駒ケ岳 甲府 小林富子


◎俳壇 山田省吾選

★参道の春日のどかや六地蔵 富士吉田 鈴木眞人

★黙祷を捧げ卒業証書受く 笛吹 石倉絹子

★芹摘めば眩しきほどの水明かり 大月 小俣義人

★しろがねの甲斐の連峰春霞 甲府 村松幸治

★土手闊歩弾む瀬音に春の風 甲斐 松田健嗣

★青空へ日毎に伸びる葱坊主 甲府 桑原博子


◎柳壇 坂田よし江選

★CMのようには効かぬ風邪薬 富士吉田 田辺義樹

★軽トラで野菜売る声甲斐訛り 埼玉 伊藤一男

★孫かこみ笑顔絶えない老夫婦 甲府 藤巻 茂

★喪が明けた日から虚しい日記帳 甲斐 馬場鉄丸

★終活の手始め先ずは棚整理 甲斐 松田健嗣

★他愛ない妻との会話今朝もまた 甲府 小林 衛

★お互いに触れないでおく胸の傷 富士吉田 樹 俊平

★泣きながら鬼に真向かう三歳児 甲州 水上優子