歌人・長尾幹也さん(2024/1/28逝去)。
3/17の朝日新聞の俳壇・歌壇の「うたをよむ」欄に、朝日歌壇の常連さんだった長尾幹也さんのことが載っていました。記事は朝日歌壇担当者、佐々波幸子さん。
朝日歌壇に半世紀近く投稿を続けた大阪府和泉市の長尾 幹也さんが1月末、闘病の末に亡くなった。66歳だった。
初掲載は高校3年生の時。経済的な理由で大学の夜間部に進み、中堅の広告会社に入社。「向いていない」と悩みつつ営業の仕事を続けた。自ら人選して告げた解雇。降格。単身赴任。「苦しい時ほど歌は生まれた」と話していた。
★リストラに幾人を切り捨てしのち彫像のごと我はひび割る
62歳の時、多系統萎縮症と診断され、近年は闘病がテーマに。会話が難しくなった昨年11月以降も、ベッドの傍らで妻朱美さんが「短歌する?」と聞くとうなずき、視線入力機器を使って詠んだ。
「気持ちをぶつけるのではなく、作品として完成させたいという思いが最期まで強かった」と朱美さんは振り返る。
★妻は泣きわれは視線に文字を打つ午後の病室蝶も鳩も来ず
最後の投稿歌を1月7日付の紙面で1首目に選んだ選者の永田和宏さんは「難病にかかりながらも詠み続けた歌は、読 む人に、生きていくとはどういうことか問いかけるものになっていた」と語る。
歌集を2冊出し、短歌講座で教えた長尾さんが投稿を続けたのはなぜか。2年前の取材で尋ねると「新聞歌壇には大衆 の息吹や活気を感じます。いろんな人生が見られるし、歌を詠まない人も読んでくれるところがいい」と返ってきた。
ファイルに収められた掲載歌は830首。歌を通して長尾さんの人生に触れた読者からいま、追悼の歌が次々に寄せられている。(歌壇担当 佐々波幸子)
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