3/17朝日俳壇・歌壇。
★老木に芽吹く気概の見えて来し(さいたま市)齋藤紀子
★淡雪の一句書き留む待合室(伊丹市)保理江順子
★初蝶や迷子が母を探すかに(青梅市)市川盧舟
◎高山れおな選
☆雪女いづれ汝(いまし)も雨女(藤沢市)朝広三猫子
※長谷川櫂共選。長谷川さんは「温暖化の果て。水蒸気女も」と評しておられました。
★太陽に近き枝より梅咲けり(筑西市)加田 怜
★鳥風や七曜知らずけふ立ちぬ(市川市)をがはまなぶ
※「鳥風(とりかぜ)」が季語(春)。「鳥雲に入る」「鳥帰る」時の風。を意味し春の季語になる。 「ちょうふう」と読めば「鳥渡る」頃に吹く風になり秋風の意味になる、だそうです。
★面々の面(つら)見定むる野焼前(長崎市)下道信雄
☆遅くなりますの書置き日永かな(羽曳野市)菊川善博
※小林貴子共選。
★梁が泣くそろそろ雪を降ろさねば(東京都世田谷区)石川 昇
★雛の間へ寝るという児の自立かな(川口市)小松トシ子
◎小林貴子選
★強情な寝癖よバレンタインデー(飯能市)細田裡子
【評より】バレンタインデー、この寝癖を何とかしないと。
★豪快な母の命日涅槃の日(戸田市)蜂巣厚子
※季語は「涅槃の日」。「涅槃会」の傍題。釈尊入滅の日といわれる旧暦二月十五日の法要。現在では新暦3月15日前後に行われることが多い。
★九十四今年も違ふ春が来る(川崎市)山本しげを
◎長谷川櫂選
★風花や海を棄てるとふ漁師(高松市)島田章平
【評】代々のなりわいを捨てる。根を切られるに等し。
★むくむくと何かが動く春の土(柏市)藤嶋 務
★杏子忌や女流集成わが標(熊谷市)松葉哲也
★朝寝して晩年の知恵深くあれ(筑西市)加田 怜②
★うつくしきあぎとを上げて春動く(八王子市)額田浩文
★人生の春一番だ初孫は(筑紫野市)二宮正博
★十三年ぶりに再開する郵便局笑顔が増えた帰還住民(郡山市)寺田秀雄
【評】なんと十三年ぶりに福島県の双葉郵便局が再開したという。
★長いけど屹度覚えむ大切な君の名パチャラプワプラパチャート(仙台市)二瓶 真
【評】来日したタイの青年の、日本人にはむつかしく長い名前をうたう。
★新雪の輝く屋根を打ち重ね丘の上まで家建ち尽くす(多摩市)豊間根則道
★熱湯に放てばみどり鮮やかに生わかめ春に名乗りを上げる(越谷市)畠山水月
★明治よりつづく棚田の畦を塗る後継者無きこの身なれども(匝瑳市)椎名昭雄
★二〇〇年米を作りし田に立ちて法人に貸すことに決めたり(山口県)山花俊作
☆着なくなり初めて知った制服の堅苦しさよ転学の春(長久手市)篠原若奈
※永田和宏共選。
◎高野公彦選
★朝日歌壇に八百余首の入選の長尾氏の死に涕あふるる(箕面市)大野美恵子
【評】長年この歌壇で活躍した長尾幹也さんの闘病死を悼む歌。八百余首という数字が凄い。
※同日の俳壇歌壇のページの「うたをよむ」にその長尾さんのことが載っていました。(下段参照)
★除雪車の軽油の売り上げ昨年の半分以下と嘆くスタンド(五所川原市)戸沢大二郎
★潮騒の熊野灘辺ゆ茶の香立つ宇治に来にけり娘らに引き取られ(宇治市)波戸与七
【評より】作者94歳。
☆お互いに照れてすれ違うなつかしい歌の中のわれ今生きるわれ(富山市)松田梨子
※馬場あき子共選。
★投稿は没になるけどその間のわくわく感の虜となりぬ(三郷市)木村義熙
☆毒を盛る国に戻りて闘いしナワリヌイ氏の死に驚かず(浦安市)中井周防
※永田和宏共選。
★殺人鬼プーチンに触れ深夜便ナワリヌイ氏の訃報伝える(名古屋市)甲斐万里子
★雪かきのお礼に豚汁しずしずと歩き持ちゆく向かいの夫婦に(飯田市)草田礼子
◎永田和宏選
☆ナワリヌイ死去のニュースを聞きながら母の襁褓の世話をしている(草加市)永吉謙一
※馬場あき子共選。
★一月の二十八日強靱な歌ごころ見せ長尾氏逝けり(箕面市)大野美恵子
★マロニエの花咲く並木をときめいて君と目指した山の上ホテル(横浜市)黒坂明也
★まさおなる沖をはなれて一夜干し軒の鱵(さより)はもう泳げない(三浦市)秦 孝浩
★わが町の昭和の写真展に出す七十年前の一年B組(壱岐市)篠崎美代子
◎馬場あき子選
★始まる予感髪に隠せしイヤリング恥じらうきみの初の手料理(大和市)李 種太
★長尾氏の訃報にふるえ浮かびくる悲哀のうたや端正な面 (大阪市)岡田信子
★新妻となりし娘が訪ね来ぬ夫を伴いよそゆきの顔で(堺市)中井光世
★贅沢な暮らしは何もしてないがなにやら金のなくなる老後(静岡県)野月真人
★所得などなき身なれども医療費のかさみて確定申告をする(栃木県)川崎利夫
★征爾氏は気さくに話し吾と写るウィーン街角ののち二十年(富士市)橋本民子
◎「うたをよむ」欄。上にでてきた長尾幹也さんのことが書いてあります。