◎俳壇 髙永久子選
★春満月机に銀のハーモニカ 長崎 入口弘德
(評)ガラスを透いて差し込むやわらかい春の月光に、机の上のハーモニカが光る。静かな景。
★春雷や内気な猫は爪を研ぐ 長崎 入口靖子
(評)ユーモアたっぷりの女性特有の香りを持つ句。どうしようもない猫好きのよう。
※ご夫婦で一席ニ席、素晴らしい!
★生徒みな髪ひつつめて針供養 佐世保 相川正敏
(評)女学生が並んで針供養をする。黒髪をきりりと結んだ少女たちの表情は真剣。
※佐世保でも、佐世保女子高校が毎年してますね。佐世保女子高校は、明治36年に裁縫学校として創設された学校で、以来、毎年の行事のよし。↓の写真は福岡東筑高校の針供養。
★この地球に条理不条理多喜二の忌 長崎 三宅三智夫
※「多喜二忌」=2/20(昭和8年)。「蟹工船」などのプロレタリア文学を代表する作家。戦時下、非合法活動で逮捕され、特高警察の拷問により殺された。29歳だった。
★木の芽吹くみな合掌のかたちして 長崎 森 昇
★春暁や青みがかりし磨りガラス 西海 田川育枝
★春うららあめ玉ひとつ口の中 長崎 林 倫子
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★末黒野や川内峠に雲走る 平戸 本川 誠
★塞がれし防空壕よ蕗の薹 雲仙 前田泰隆
★春爛漫船も屋並も輝きて 佐世保 吉田治生
★受験生ポンと叩かれバスに乗る 五島 松本隆司
★春きざすテーブル掛けの花模様 五島 田中裕子
★下萌やジャングルジムに燥ぐ子ら 西海 楠本シヲリ
★春暁の海の空港灯の点る 大村 佐藤幸子
★靴跡の大小並ぶ春の泥 諫早 中島こゆき
★老いの手に話しかけをる春の土 松浦 永淵勝幸
★昼月や一心不乱に鶴帰る 五島 眞鳥謙吾
【選者吟】春潮の唄ふごと寄すお春の碑
◎歌壇 立石千代女
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240317/07/kawaokaameba/89/c9/j/o1080056015413933799.jpg?caw=800)
★短歌とは心のシャッター押すことね詠まれた歌は心のアルバム 五島 山下コト
★忘るるは神様からの贈りもの重き荷物をおろせるように 島原 星野裕美子
★物言わぬ花にも答えを聞いている人には言えぬ思いつのれば 諫早 野田明美
★入選の難き歌壇にわが歌のあるに嬉しく猫を抱き締む 佐世保 小山雅義
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240317/07/kawaokaameba/3d/0a/j/o1080052615413933802.jpg?caw=800)
★我が国は戦さがなくて辛うじて平和なれども砂上の楼閣 諫早 藤林東容
★もう少しやさしくすれば良かったと又詫びている妻の命日 雲仙 宮崎秋雄
★路地裏の時の流れは滞りあの頃のまま昭和のまんま 長与 相川光正
★外濠の水面に揺るるかがり火は椿まつりに賑わい添える 五島 都々木邦子
★夜(よ)の夢は追われてばかりなりぬれど目覚めては追う夢ばかりなり 平戸 永田米吉
★苦労など微塵もみせず他愛ない話いつしか深いと気付く 長崎 宮崎あや
★畑隅になげ捨てられし白菜の芯より菜の花まがりしまま咲く 佐々 山本久子
★「ごめんネ」と言ひつつ魚を捌きゐし母の背中を想ふことあり 諫早 田中りつ子
★我とともに嫁ぎ五十年働いた裁縫箱は同士となりぬ 南島原 高木恵子
◎柳壇 永石珠子選 題「進む」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240317/07/kawaokaameba/a8/d8/j/o1080085515413933811.jpg?caw=800)