3/17長崎新聞「郷土文芸」(1) 俳壇・歌壇・柳壇。

◎俳壇 髙永久子選

★春満月机に銀のハーモニカ 長崎 入口弘德

 (評)ガラスを透いて差し込むやわらかい春の月光に、机の上のハーモニカが光る。静かな景。 

★春雷や内気な猫は爪を研ぐ 長崎 入口靖子 

 (評)ユーモアたっぷりの女性特有の香りを持つ句。どうしようもない猫好きのよう。 

 ※ご夫婦で一席ニ席、素晴らしい!

★生徒みな髪ひつつめて針供養 佐世保 相川正敏 

 (評)女学生が並んで針供養をする。黒髪をきりりと結んだ少女たちの表情は真剣。

 ※佐世保でも、佐世保女子高校が毎年してますね。佐世保女子高校は、明治36年に裁縫学校として創設された学校で、以来、毎年の行事のよし。↓の写真は福岡東筑高校の針供養。

★酒辞して帰る山路や朧月 西海 原田 覺

★この地球に条理不条理多喜二の忌 長崎 三宅三智夫 

 ※「多喜二忌」=2/20(昭和8年)。「蟹工船」などのプロレタリア文学を代表する作家。戦時下、非合法活動で逮捕され、特高警察の拷問により殺された。29歳だった。

★木の芽吹くみな合掌のかたちして 長崎 森 昇 

★春暁や青みがかりし磨りガラス 西海 田川育枝

★春うららあめ玉ひとつ口の中 長崎 林 倫子

★末黒野や川内峠に雲走る 平戸 本川 誠

★塞がれし防空壕よ蕗の薹 雲仙 前田泰隆

★春爛漫船も屋並も輝きて 佐世保 吉田治生

★受験生ポンと叩かれバスに乗る 五島 松本隆司

★春きざすテーブル掛けの花模様 五島 田中裕子

★下萌やジャングルジムに燥ぐ子ら 西海 楠本シヲリ 

★春暁の海の空港灯の点る 大村 佐藤幸子 

★靴跡の大小並ぶ春の泥 諫早 中島こゆき 

★老いの手に話しかけをる春の土 松浦 永淵勝幸 

★昼月や一心不乱に鶴帰る 五島 眞鳥謙吾

 【選者吟】春潮の唄ふごと寄すお春の碑


◎歌壇 立石千代女

★短歌とは心のシャッター押すことね詠まれた歌は心のアルバム 五島 山下コト

★忘るるは神様からの贈りもの重き荷物をおろせるように 島原 星野裕美子 

★物言わぬ花にも答えを聞いている人には言えぬ思いつのれば 諫早 野田明美

★入選の難き歌壇にわが歌のあるに嬉しく猫を抱き締む 佐世保 小山雅義

★我が国は戦さがなくて辛うじて平和なれども砂上の楼閣 諫早 藤林東容

★もう少しやさしくすれば良かったと又詫びている妻の命日 雲仙 宮崎秋雄 

★路地裏の時の流れは滞りあの頃のまま昭和のまんま 長与 相川光正 

★外濠の水面に揺るるかがり火は椿まつりに賑わい添える 五島 都々木邦子

★夜(よ)の夢は追われてばかりなりぬれど目覚めては追う夢ばかりなり 平戸 永田米吉

★苦労など微塵もみせず他愛ない話いつしか深いと気付く 長崎 宮崎あや

★畑隅になげ捨てられし白菜の芯より菜の花まがりしまま咲く 佐々 山本久子

★「ごめんネ」と言ひつつ魚を捌きゐし母の背中を想ふことあり 諫早 田中りつ子

★我とともに嫁ぎ五十年働いた裁縫箱は同士となりぬ 南島原 高木恵子


◎柳壇 永石珠子選 題「進む」

★進学の孫が徹夜の灯を消さぬ 長崎 松本篤世 

★それぞれの夢の道へと進む春 長崎 西畑伸二 

★我が道を進み自立の親離れ 長崎 岡 智英子 

★進む道父の助言に今がある 大村 林田敏隆 

★進む道自分で決める子のやる気 時津 浦馬場峯子

★少しずつ復興進み笑顔出る 長崎 中島まゆみ 

★進みたい道を進めと親心 東彼杵 沖永愼吾 

★取り戻す能登の日常日日進む 長崎 吉永詩織 

★齢重ね食事が進む有難さ 諫早 中山淳子 


◎「グループ作品」「歌・句誌」以下はページをあらためます。

◎「短歌(うた」ありて」
◎「俳句はいま」神野紗季