3/11長崎新聞郷土文芸(1)俳壇•歌壇•柳壇。

◎俳壇 吉岡乱水選

★弥撒へ子ら春泥を飛ぶ翅を持ち 西海 原田 覺 

 (評)絵踏みの時代を抜け信仰が自由な今の子ら。生き生きとした姿を「春泥を飛ぶ翅」に託して。 

★風雪の幹のうねりや臥龍梅 長崎 伊藤ひとみ

 (評より)永年の風雪に耐えた力強い姿に咲かせた梅花をたたえた句。 

★畑焼きて帰りし父の貌の煤 西海 楠本良子 

★料峭や殉教の徒の乗船地 佐世保 相川正敏

★母在れば厨にハミング草の餅 長崎 宮崎包子

★凛と咲く夫を追慕の庭の梅 島原 佐藤美保子

★大いなる命膨らむ猫柳 諫早 杉本伊織 

★花五倍子挿してより吹く山の風 五島 田中裕子

★鴇色のイヤリング買ふ春の風 諫早 川上典子

★コロナ禍を超えて溌溂卒業子 諫早 篠崎清明

★春帽子被り直して喜寿迎ふ 大村 平松文明

★どんの山に砲台残る苜蓿 諫早 篠崎ひでこ

★逆あがり何度もする子山笑ふ 長崎 吉田志津子 

★四百年の史実を秘めて梅の洞 島原 柴田ちぐさ 

★ふくよかな母の手のひら桜餅 長崎 江里口水子 

★ぼんぼりの灯るロビーや雛飾り 雲仙 草野悠紀子 

★棟上げの材木ずらり春立ちぬ 島原 荒木アヤ子 

★寒暁や鏡覗きて貼る湿布諫早 野崎治行

★大壷に菜の花溢るケアハウス 平戸 大浦千恵子 

★浮く鳥の産毛をゆらす春の風 諫早 川口久敏 

★一湾にさざ波の綺羅寒の明け 西海 有川絹江 

★突き損じ毬となしたる海鼠かな 平戸 本川 誠

【選者吟】抱かるるを否む娘(こ)となり雛祭


◎歌壇 馬場昭徳選

★乗客にお辞儀してから入れ替わる路面電車の運転士達 長崎 保坂清子 

★独りとはかくも自由とうそぶけどわびしさという付録つきくる 川棚 中村恭子

★老いゆくは自然なれども抗ふもまた自然なりストレッチする 長崎 池田里和子

★などかくに赤き光の暖かき川面を照らす冬のランタン 長崎 納富美奈子

★わけもなくただおもむろに眺めやるカレンダーには空欄ばかり 諫早 田島久美子

★大根に作りし人の名が貼られ土の匂いもレヂに運びぬ 長崎 川添和子 

★終活という名は嫌いこれからの残りの人生楽しく暮らす 五島 松浦尚子

★明白な罠と言うならレジ横の破れ饅頭百円はそれ 長崎 中小路和久

★新聞の広告ちらし較べ見る物価対策兼ねて楽しむ 諫早 野田明美 

★犬猫も今や保険を掛けられてわれには有らぬ保険の証 時津 浦川敏子 

★齢重ね後期高齢迎へし日昨日の我と違ふ吾をり 長崎 桑原和好

★ 田や畑を野山に返して農じまい夢の中でも先祖に詫びて 雲仙 宮崎秋雄

★夫逝きて独り暮らしも十年に春野のれんげ仏前に供ふ 雲仙 中村澄子


◎柳壇 瀬戸波紋選 題「掃除」

★大掃除アルバム見つけ進まぬ手 五島 松本隆司

★大掃除母のタクトに踊らされ 長崎 本多政子

★掃除機にびくともしない粗大ゴミ 長崎 丸田和男 

★掃除した先から汚す子沢山 長崎 中村行男

★邪魔ですよルンバに尻を小突かれる 諫早 平松 茂

★忘れてたものに出会える大掃除 大村 山岸洋美 

★雑巾一枚手慣れた祖母の拭き掃除長崎 森本志真子 

★春一番足の踏み場もない掃除 松浦 小林壽子 

★ご近所の会話も弾む溝掃除

時津 浦馬場峯子 

★ご近所の絆深める大掃除 長崎 池山耕治 

★海岸掃除みんな漂着ゴミばかり 佐世保 八重野さくら 

★なぜ拭くの俺の後から妻が拭く 長崎 多嘉良知光 


◎ジュニア俳壇 江良修選

★卒業へ向かう足元少し不安 佐世保・祇園中3 石田勘太朗

★むずがゆい花粉症と恋心 祇園中3 田渕 凛 

★桜散る別れを告げる中学校 祇園中3 熊隅心麒

★花びらのダンス始まる春一番 祇園中3 江口結陽

★一月後実を結ぶ春夢にみる 祇園中3  久保満里菜

★卒業式思い出つまった体育館 祇園中3 田口結理

★書き初めに今年の抱負力込め 祇園中1 藤原結菜

★年明けは港の船の汽笛鳴る 祇園中1 久家彩翔


◎ジュニア歌壇 杉山幸子選

★いつもより景色が白く寒い朝たくさん見える人の足跡 佐世保・鹿町中2 川口亜理沙

★ストーブの灯油がきれる音がして寒い外へと出ていく私 佐世保・崎辺中1 多田有來音 

★クリスマスプレゼントはねなかったよだけど家族がべ

★白色に染まりきった雪景色 桜色が恋しくなるね 崎辺中2 手島瑠美穂

★先輩の背中をながめ追いかける心の中の何かが動く 鹿町中2 西 琥太楼 

★冬の空小さな雪が降り積もる自分のうしろに続く足跡 鹿町中2 前田航太 

★登校中手袋マフラー雪だらけ町も一緒に雪化粧する 鹿町中1 佐々木海斗

★雪の朝ぼうしを被る私たち車も屋根に雪を積もらす 鹿町中1 豊田真比留

★家の中風がしゃべるのヒューヒューと地面の雪が舞い上がってる 鹿町中1 松尾朔夜 

★寒風に着る服もなくたくさんの木々はならんで春を待ってる 鹿町中1 中嶋芽彩 

★受験期を竜のように乗り越えたいな今年は本気絶対ガンバル 佐世保・東明中3 豊村咲暁

★目標へ全力疾走毎日をこの手で掴む夢への一歩 東明中3 久田凜子

★少しでも自分でできる事をする自立に向けて近づく時間 東明中3 柴田咲季

★書初で白い半紙に力強く書いた黒文字想いを込めて 東明中3 井手千陽

★抱負決め合格祈る初春におまもり買ってにぎりしめる手 東明中3 古川いちか

★友からの初便見て思うのはラインじゃなくて話しがしたい 東明中3 熊谷佳恋

★初朝もいつもの朝とかわらないだけど何かが違ってみえる 東明中2 福田菜穂

★初詣今年の運は大吉だ次に見たのは恋愛のとこ 東明中2 松野百華


※グループ作品他は次ページに。