3/9NHKラジオ文芸選評(短歌)「東日本大震災を詠む」選者は梶原さい子さん。

◎入選作品

★甦るふるさとはきっと甦る瓦礫の海に立ち尽くした日(岩手県 ひと粒の種さん 61)


★一夜明け上空からです その一夜私は遠い町で祈ってた(福岡県 栗皮さん)


★幾度もあの日が巡ってきてもまだ傷ついたガーベラは癒えない(高知県 佐竹紫円さん 37)


★母さんのあかぎれの指がすきでした海といっしょになった今でも(岩手県 くらむぼんさん 17)


★みちのくの天へのぼりし二万二千のはらからは渦巻きて銀河(兵庫県 藤田晋一さん 66)


★津波からまだ還らない子を待って植えた桜のまた咲く ひとり(東京都 稲山博司さん 64)


★歓声をあげて園児ら土筆つむ震災前の地図にない道(三重県 伊藤石英さん 75)


★鮪立(しびたつ)とふ勇ましき名を覚えけり復興支援の報告会に(石川県 神田博行さん 74)


★震災の医療援助に行く妻の 姿見た娘も今は看護師(長野県 グリッターブーちゃんさん 61)


★震災を知らぬ子供に教訓を伝える授業六年二組(滋賀県 近江菫花さん 61)


★十三年探し続ける春がある三月十日まであつた春(神奈川県 三玉一郎さん 58)


★みどりごが中学生になる春に廃炉への道なほ見つからず(千葉県 岡本恵さん 46)


★ふるさとはこころにあるとおもへども帰還困難とふ冷たき言葉(福島県 可笑式さん 57)


★被災者はいつまで被災者なのだろう能登におくったかもめの玉子(宮城県 浅黄かな恵さん)


★夜明けより強まる風が頬を打つあの日のことそして能登思ふ(宮城県 赤間学さん)


★菓子パンの話でもするしかなかった福島からの転校生は(神奈川県 高野文さん 23)

 ※石井かおるさん選。


◎来週(16日)は俳句、兼題は「石鹸玉」、選者は津川絵理子さん。投稿は11日午後11時59分まで。

梶原さい子さん 1971年宮城県気仙沼生まれ。短歌会」所属。高校教員。1997年 河野裕子に出会い、歌を詠み始める。2006年 抒情文芸最優秀賞、2010年 宮城県芸術選奨新人賞、2011年 第29回現代短歌評論賞(『短歌の口語化がもたらしたもの - 歌の「印象」からの考察』)、第1回 塔短歌会賞、2015年 第三歌集『リアス/椿』で第11回葛原妙子賞、2014年度宮城県芸術選奨、2021年 第四歌集『ナラティブ』で日本歌人クラブ東北ブロック優良歌集賞受賞。『塔』選者、朝日新聞みちのく歌壇選者。日本現代詩歌文学館「短歌入門講座」講師。歌集『ざらめ』『あふむけ』『リアス/椿』(葛原妙子賞)『梶原さい子歌集』『ナラティブ』(日本歌人クラブ東北ブロック優良歌集賞)『アルカリ色のくも』(宮沢賢治の青春短歌を読む 佐藤通雅編著)『3653日目〈塔短歌会・東北〉震災詠の記録』『落合直文の百首』。 番組で紹介された梶原さんの短歌。

★碑の弾くきらめき人々はつひに名前となりながら立つ

★まだしばしわたしに時は残されて津波の夜の火を分けてゆく