3/9西日本新聞「ながさき読者文芸」

◎俳句 籏先四十三選

★鶏鳴や五時の寝室冴返る 西海 森 保子

★無口なる別離の時や竹の秋 佐世保 川原豊子

★鳥雲に入るまで我は動かざる 佐世保 牛飼水鳥

★卓球に励む老い等や二月尽 平戸 古川敏郎

★春一番出船ためらう漁師かな 佐世保 牟田一彦

★梅東風や合否確認待つ家族 大村 串崎洋一

★やはらかき湖畔の風と初音かな 平戸 田地 花

★旅立ちを寿ぐごとく白木蓮 佐世保 松永愛子

★置き薬入れ替へしより春の風邪 佐世保 太田恵子

★和菓子舗に職人技の春立ちぬ 佐々 林 エイ子

★ランタンもオブジェも飛ばし春一番 長崎 成瀬至楽

★樟脳の匂しばらく雛飾る 島原 坂本優美子

★春一の沼に踏張るせせり鷺 雲仙 伴 信彦

★回転焼買うて半日探梅行 佐世保 馬場定水

★梅が香や日向に臥する御神牛 佐世保 相川正敏

★病室の窓開け放ち春の風 南島原 末吉貴浩

★梅園に新婦はドレス裾上げて 佐世保 詫間初美

★山茶花の赤き花びら地も赤く 佐世保 松崎伸苑


◎歌壇 久保美洋子選

★「お蔭さまで」何度言っても良いひびき朗らほがらに歩いて行こう 大村 辻フミヨ

 【評より】作者は百二歳。炊事、洗濯、グラ ウンドゴルフもなさる。

★せせらぎの奥の山からカナカナを聞きて終はりぬ対馬の旅は 壱岐 町田典子 

★水仙の花叢つづく佐世保から松浦までは単線鉄路 佐世保 林田 勝

★わが里の百五回目とう敬老会祝ってもらう有難さかな 大村 内田和代

★「摩訶般若」札所札所で唱えたる四国の遍路去年終えにけり 佐世保 小山雅義

★終戦後の脱脂粉乳、コッペパン楽しかりしよ給食時間 松浦 舩原清洋

★旧姓で呼ばれて妻が振り返る車椅子には米寿の恩師 対馬 神宮斉之

★ママ、ママとぐぜりし孫がはや二十歳三つ揃い着せ爺の目細る 佐世保 小田美惠子 

★月一度歯科で検査と治療受く米寿のわれの歯は十四本 佐世保 小田賢司

★郵便が値上げさるると報じられ送る三首に尚心込む 南島原 末吉貴浩

★上げ膳に据え膳であるわが暮らし妻の苦労に感謝をささぐ 平戸 古川敏郎 

★島原のこの日このみち草の芽が湯水の湯気に空あおぎおり 島原 荒川賀津子


◎諧句 松下冨士子選

★無事朝を迎え感謝の前を向く 対馬 神宮斉之

★老いを積み常に明るい方を向く平戸 古川敏郎

善を積み思い出を積み年を積む 松浦 松浦靖子

★泣いて勝つ子泣き相撲の風物詩 松浦 舩原清洋

★春うらら土筆探して土手散歩 島原 山口 洋

★折込のチラシで巡る机上旅 諫早 八田幸世

★生き生きと歩いて老いを遠ざける 諫早前田良子

★厳寒にめげず微笑む寒あやめ 佐世保 山田テル子

★母から子孫へと継がれ針供養 佐世保 牟田一彦

★枝垂れ梅ピンクに染まるサンルーム 佐世保 末藤梅子

★日向ぼこ八十路の友と回顧談 島原 山口光子

★コツコツと淡々と暮れ老いの日々 松浦 前田サツキ