¾長崎新聞「郷土文芸」(1) 俳壇・歌壇・柳壇。

◎俳壇 前川弘明選

★(一席)星冴ゆるもう道化師も眠るころ 長崎 入口弘德 

★(ニ席)百千鳥峰の左右に海二つ 長与 竹馬亮二 

★(三席)産土の森より湧きて水温む 長崎 森 昇

★春の夢青いインクで書いておく 長崎 入口靖子

★鳴く牛につれ鳴く仔牛春動く 平戸 本川 誠

★春来る入江の銀波果てもなし 五島 田中裕子 

★人垣の微熱春節演舞場 

★野良猫の行方は知らず梅の花佐世保 松山茂則

★秘密基地の屋根は青空風光る 佐世保 相川正敏

★触れたれば宇宙の温度冬薔薇 佐世保 小山雅義

★産土の絵馬からからと春一番 長崎 三宅三智夫

★寺の名の木の橋渡り芹を摘む 五島 中村敏子

★一枚の海一枚の畑を打つ長崎 高谷忠昭

★参道の長き石段梅真白 西海 楠本シヲリ

★満天のランタンの空龍が飛ぶ 諫早 西宮三枝子

★ランタンの極彩色や春動く 諫早 中島こゆき

★寒月や最終フェリーゆっくりと 諫早 川上典子

★衿元をなでるそよ風草萌ゆる 長崎 江里口水子

★からゆきの眠る異国月朧 雲仙 尾崎春美

★ローカル線のリズムに任せ春の中 長崎 林 倫子

★春立ちぬ古き諺母の声 島原 坂本眞鶴子

★百年を生くる気概や春の朝 長崎 辻 耕平


◎歌壇 寺井順一選

★つなぐ手をふりほどきては駆けてゆく光あふるる入学

の朝 南島原 松永文則

★閃光に焼かれし姉を看取りたる十五のわれの狂おしき夏 西海 原田 覺

★ヒール履く足の悴みだんだんとほぐれて楽しタンゴにワルツ 長崎 下川史子 

★「火砕流の爪あと残る山肌を見つつ球打つ十人の老い 雲仙 山本クニヨ

★外壁に緑のさなぎ張り付きて蝶になる季をじつと待ちをり 長崎 馬渡正代

★久々に朝の電車で新聞を読む人のあり昭和を偲ぶ 長与 相川光正

★しっとりと四温の雨が降ってます夫逝きてより百か日過ぐ 川棚 中村恭子

★ターミナル別れのテープ空に舞い姿かすむも手を振る母よ 五島 小田オク子

★窓際の独りの席は冬陽うけ指の温もる図書館の午後 長崎 小島茂之 

★朝もやに包まれ入る観光船今年は賑わうランタン祭り 長崎 吉田平八 

★我が思ひ声に昇らず戸惑ふも主治医のペンはカルテを走る 佐世保 川口栄子

★味噌汁に石蓴を浮かべし今日の膳磯のかをりと春めく色よ 雲仙 前田晴男

★どのくらい卒業生に書きたるか強く生きよと筆に託して 佐世保 小山雅義

★弱腰と言はせぬために報復を選びしトップも民も悲しき 長崎 林 志郎

★節分の鬼と福との面作り孫に褒められ天狗になりぬ 長与 竹馬亮二

★雀卓に紅一点が加わりてその場の空気明るくなごむ 長崎桑原和好

★満々と弓引きしぼり矢を放つ八十六歳に青春めぐる 佐世保 谷頭正仁

★店頭に桃カステラの春の色孫らの顔の浮かび購う 島原 本多たつみ

★孫五歳訪ひ我との名コンビ爺がぼければ幼が突っ込む 諫早 平松 茂

★くしゅくしゅと絡みあひたる結び目をほどこふとするわれの日常 佐世保 久田康子

★若ぶらず年寄りぶらず今を生く七十七歳ただありがたし 雲仙 鍬塚キヌエ


◎柳壇 井上万歩選 題「さすが」

★復興へさすが日本の底力 長崎 西畑伸二 

 (評)神戸も東日本もどうにか復興した。能登も確実に立ち直る。日本だもの。

★能登地震へさすが大谷桁違い 長崎 森本志真子 

 (評)日本が生んだ世界の大谷である。今年の活躍が待たれる。心から応援したい。 

★両陛下通訳なしでご懇談 五島 松本隆司

★福山氏地元凱旋さすがです 諫早 中山淳子 

★八冠と連勝さすが藤井棋士 長崎 本多政子 

★大家族さすが我慢を身に付ける 長崎 岡 智英子 

★さすがだと親が言われる子が育ち 長崎 松添春樹

★さすが匠一厘の誤差目で分かる 雲仙 山口顕治 

★救命士さすが火の中人救う 長崎 中村行男

★隠し事さすがに母は知っていた 南島原 森下政子

★指揮オザワさすが世界を魅了する 長崎 森本朝日郎

★おふくろの味が息子の胃をつかむ 壱岐 瀬川美枝子 

★休場明けさすが横綱賜杯抱く 長崎 島崎日曻 

★母の味さすが年季の目分量 諫早 鳥巢律子

★キャンプインさすが大谷サイン責め 長崎 森 昇

★土俵際さすがに決めた平戸海 諫早 松原静枝

★この旨ささすがチャンポン発祥地 長崎 丸田和男 

★和の食を極めさすがの五つ星 諫早 木下是治

★変面ショーさすがにプロという手際 佐世保 山本絹代

★昨日会った友がまさかの黄泉の旅 長崎 柏木茂紀

★春が来たさすがにつらい花粉症 長崎 石田喜美子 

★冬景色さすが誇りの富士の山 長崎 井上須美子 

★日航の訓練さすが皆避難 大村 今村一彦

【選者吟】さすがだと言われるまでの血の修行


以下、「グループ作品」「歌・句誌」他はページをあらためます。


「グループ作品」「歌・句誌」より

◎一面「きょうの一句」
 他に「あわい」欄、「短歌はいま」あり。