3/3NHK短歌 題「ひとり」選者は川野里子さん、レギュラーは内藤秀一郎さん、深尾あむさん、司会はヒコロヒーさん。

◎「三十一音の物語」 


「“私”に出会おう」が川野里子さんの時の年間テーマ、今回は「キラッと光る表現」。例歌↓

★金目鯛おほきな眼みひらけり戴冠せしごとかあんと死にて 川野里子『天窓紀行』

★野口あや子。あだ名◯◯◯◯ハンカチを口に咥えて手を洗いたり 野口あや子『夏にふれる』


 第1句に自分の名前を入れたのも驚きですが、何というあだ名だったんでしょうね?下の写真(数年前のお姿)からは想像もつきませんが。

原歌は↓でした。

★野口あや子。あだ名「極道」ハンカチを口に咥えて手を洗いたり


 《「極道」というあだ名にも驚きますが、下の句の柔らかさとのギャップからその作者の心を様々に想像される》(川野里子さん)

★先生、と呼ばれて胸に羞ずかしさ怖さの◯◯が咲くので隠す 千種創一『千夜曳獏』


 ※千種創一さんは、1988年名古屋市生まれ。歌人詩人作家翻訳家東京外国語大学(アラビア語学科)在学中に「外大短歌会」創立。中東ヨルダンレバノンに住む。2013年、短歌同人誌「中東短歌」創刊。『千夜曳獏』は第2歌集(2020年)。


 これも全く想像つきませんねえ。◯◯は「菊」でした。↓

先生、と呼ばれて胸に羞ずかしさ怖さの菊が咲くので隠す 


 歌の背景を全く知りませんのでどういう歌なのか…。いずれにしてもやはりここに何が入るかによって歌の内容ががらっと変わることになりますね。


◎入選6首  題「ひとり」

★木漏れ日をゆらゆら歩むまひるまにひとり寡黙な豹になりゆく 東京都杉並区 石川真琴

★ベビーカーへみどりごひとり残されて船外活動ほどの静けさ 神奈川県横浜市 小鷹 佳

★僕だけが集合写真のひだりうえどこにも存在しない向日葵 神奈川県横浜市 山田裕樹

★聖夜ひとり元旦ひとり震度5強で部屋が雪崩落ちてもひとり 富山県 玄兎

 ↑ 特選一席。

★月光に猫は裸で磨かれてつくづく生きてゆくのはひとり 愛知県名古屋市 浅井克宏

★遠くまで悲しみ見えるキリンには無数の孤島ひとつはぼくの 長崎県長崎市 佐々木泰三

 ああ、佐世保の九十九島動植物園(森きらら)かも知れません。九十九島を見渡す船越山の山頂にあります。

 入選歌及び佳作は「NHK短歌テキスト」5月号に掲載されます。次回投稿は↓

◎「秀一郎とあむの ここから短歌」

★上だけをただひたすらに上だけを見上げる子供の笑顔がきれい 深尾あむ

 

 前半の内容が「ただ上を見上げる」というだけで抽象的で、後半の子供の様子がただ「笑顔」というだけでどういう雰囲気の笑顔なのかよくわからない…。

 今回は、だいぶ上達されているから、自分で直してみるという趣向↓(秀一郎さんの場合も)

降ってくる花びら見上げ上だけ見上げる子供の笑顔がきれい 

 《はい、お見事でした》(川野里子さん)

★綺麗だなガラスのかけら僕はまだ何色にも染まりたくない 内藤秀一郎

 《「綺麗だな」と最初に来て、この短歌はここで終わっている》(川野里子さん)

 ↓(自己添削)

虹色のガラスのかけら僕はまだ何色にも染まりたくない

秀一郎さんとあむさんの力作も紹介されました。

★海に行こ。誘ったもののどうしよう海を眺めた君の横顔 内藤秀一郎

★あの音はそうか最後のスターマイン夏に背を向け一歩踏み出す 深尾あむ

 「スターマイン」は、花火大会のフィナーレを飾る、様々な技術を駆使したド派手な打ち上げ。


◎ヒコロヒーさん、短歌初発表↓

家康の友と友になれた喫煙所会えなさそうやな光る君には ヒコロヒー

◎「ことばのバトン」

 ↓(引き継ぐのは、写真家の南阿沙美さん。北海道出身)