3/2西日本新聞「ながさき読者文芸」

◎俳句 籏先四十三選★軒先に陽をこぼしつつ梅開く 佐世保 小山雅義

★下萌えや大志抱きし日は遠く 諫早 篠崎清明

 【評より】「少年よ大志抱け」。年にはかかわらず、もちつづけるべし。

出航の水脈の燿ふ寒の明け 佐世保 相川正敏

★料峭や木の間に光る白き水脈 西海 楠本シヲリ

 料峭」=春風が肌に寒く感ぜられるさま。

★子猫飼ふ黒澤よりも小津が好き 対馬 神宮斉之


★凍月に仕事の励みもらふ朝 諫早 石田志帆

★少年の逆立ちすくつと春動く佐世保 川原田安子

★手付かずの園児の花壇下萌ゆる 佐世保 太田恵子

★春近し城下の角のカフェ灯り 平戸 田地 花

★茨の芽棘に守られ動き出す 佐世保 松永愛子★竹山の葉洩れ揺らして鳴く笹子 雲仙 伴 信彦

★朽ちかけし家点点と冬ざるる 佐世保 平松公子

★両膝のリハビリ今日の余寒かな 南島原 田中よしみ

★前向きに生きてこの年蕗の薹 大村 串崎洋一

★梅白し白寿媼の髪黒く 諫早 安浪加余子

★青春の淡き思ひ出梅の花 南島原 末吉貴浩

★熱中のスケボーの児や日脚伸ぶ 諫早 田中道信

★芳春を嗅ぎつけ犬の尾を振りぬ 佐世保 牛飼水鳥

 ※「芳春(ほうしゅん)」=花ざかりの春。春の美称

★青空に二分咲く梅のあどけなさ 佐世保 五月女 守

★春遅し再生願う能登の競り 佐世保 中村フミ子

★地震の地の児のむじやきさや雪催ひ 南島原 松浦せつこ

★蝋梅の透し見る世の憂え多々 佐世保 川原豊子

◎諧句 川田金太郎選

★そのつらさ句に思い込め能登の人 島原 荒川賀津子

★隙間なく岩牡蠣並ぶ河口岸 南島原 上田善悟

★梅の花庭の隅より春告げる 南島原 末吉貴浩

★鬼火炊き無病息災餅を焼く 南島原 北御門チヨ

★脳トレの言葉遊びに灯を点す 諫早 松原静枝

★寒風に野いちご達が踊ってる 長崎 堤 貴美子

★ネコヤナギ故郷思い出暖かく 佐世保 松崎伸苑

★早起きし空見上げてる作業服 佐世保 山口竹春

★捨てきれぬ夢と希望を追う八十路 佐世保 小山雅義

★大雪の天気予報に大騒ぎ 佐世保 山田テル子

★塞翁が馬と風向き気にもせず 佐々 法本安子

 ※「塞翁が馬」=人間万事塞翁が馬。幸せが不幸に、不幸が幸せにいつ転じるかわからないのだから、安易に喜んだり悲しんだりするべきではない、というたとえ。

★猫のため猫草植えて発芽待つ 佐々 衛藤佳奈子

★またひとつ空き家の増えた過疎の町 松浦 母袋トヨ子

★カーテンに節分の豆隠れんぼ 松浦 舩原清洋

★老いてゆく明日を楽しみ早寝する 松浦 松浦靖子

★よみがえれ美しき能登光あれ 平戸 森 久美子

★今はもう老々介護趣味の域 平戸 古川敏郎

★雲の中鳴き声残し渡り鳥 壱岐 植村多恵子

★戦いの国の子等にも福よ来い 壱岐 深見秀子

★青空に届けとばかり背伸びする 壱岐 市岡妙子

★あの頃は判らなかった小津の価値 対馬 神宮斉之

★親切が渡る世間を浄化する 松浦 前田サツキ

★人の世は喜怒哀楽の繰り返し 壱岐 砥綿 滿


◎歌壇は休載でした。


◎今日の当地の気温 、何と!