俳句ポスト365 兼題「蜜柑」の回の火・水曜日【並選】【佳作】(中級者以上)


◎火曜日【並選より】


蜜柑むく祖母は戦中話など 宗平圭司

ひと房の蜜柑で看取る卒寿かな 
もふもふ

好物の蜜柑を食べて逝きにけり 紗藍 愛

剥きかけの蜜柑ぽつんと置かれけり 豊美島生音男

波光る入江望みて蜜柑狩 いつか

蜜柑食み三島由紀夫を読んでゐる 砂山恵子 

寝室にベビーモニター蜜柑剥く コーヒー博士

眠る子の手より転がるみかんかな 高田 杏

日本語の上手な一家蜜柑狩 中里 凜

黙って蜜柑摘む姉の目に泪 紅 珊瑚

遺言を蜜柑むきつつ切り出しぬ 風の鳥

平凡といふありがたさ蜜柑むく 健蘭

美人では無しと渡さる島蜜柑 伊予吟会 玉嵐

攻防の羽音はげしき蜜柑山 対馬清波

恍惚のひとに蜜柑を持たせけり 長谷機械児


震災の救援物資の蜜柑かな とんぼ

一族の墓にはじまる蜜柑山 蓮田つばき

地震速報剥きかけの蜜柑置く 卓司

蜜柑山倉庫に眠る父の衣 蔵原貢次郎

蜜柑むく言い訳付きの独り言 金子泰山

リュック開けまず仏壇へ初蜜柑 小野陽笑

継ぐ人の無きや蜜柑の山暮るる 洋々

蜜柑の皮たらひに放り足湯かな 鳴海沓子

大正の蜜柑ひとつ剥かぬ舅 中 兎波

食べかけの蜜柑居眠る母老いて 空 ひろ


摘まれずに蜜柑は山に残りけり 柊瞳子

何もかも忘れし母へ蜜柑剥く くぅ

愚痴聴いて掌にある蜜柑かな Early Bird

蜜柑さえあれば理想の家なのに GONZA

石垣のごとく蜜柑の積まれたり 平良嘉列乙

ふるさとの蜜柑ひと山買ひにけり ひでやん

"美味しい"と最期の笑顔くれた蜜柑 中島穂華

故郷の名の付けられし蜜柑買う 田中紺青

ゆさゆさと海に近づく蜜柑山 城内幸江

★箱入りの少し四角い蜜柑かな そめいゆ

平和なる日本に在りて蜜柑食ぶ 於大純

仕送りの箱に手紙と蜜柑やら 雑魚寝

蜜柑むきむき切り出し辛きおめでたよ 白猫のあくび

ため息の家計簿を閉じみかん喰う 中村雪之丞

瀬戸内の風は柔らか蜜柑山 加藤水玉

みかん皮干して私薬剤師 羽衣@


◎水曜日【佳作より】


スランプの机に置いてやる蜜柑 かねつき走流

対岸は伊方原発蜜柑捥ぐ 涼月橋

蜜柑さへ剥かぬ父ではありました はれまふよう

★噴きさうな水の重さの蜜柑摘む トポル

移動スーパー目指す蜜柑の谷の家 さゆり@金カル

蜜柑剥く病名知らぬふりのまま 加座みつほ

★蜜柑熟る古墳時代の処刑場 伊予吟会 宵嵐

内定をもらえぬ吾子へ蜜柑置く 伊藤てまり

屠る手と蜜柑むく手とあやす手と はぐれ杤餅

避難所の知らぬ子と剥く蜜柑かな 中村一烏

蜜柑むく癌と知らない父の側 えいぎらら