2/19長崎新聞「郷土文芸」(1) 俳壇・歌壇・柳壇。

◎俳壇 吉岡乱水選

★春隣鶴の港の白き巨船(ふね) 諫早 篠崎ひでこ 

 (評)鶴の港は、美港長崎。純白の客船の停泊。地震や戦の絶えぬ世なれどきっと春は来るはず。

★採血す春来る方へ手を伸ばし 長崎 宮崎包子 

 (評)体調確認のための採血。幸せへ道は開けているはず。明るい希望の春へ祈りの手を伸ばし。

★船笛の長き余韻や寒の明け 佐世保 相川正敏

★春寒や帰宅叶はぬ地震の民 諫早 篠崎清明 

★書初めや師の一筆は昇り竜 平戸 里崎 雪

★先づ遺影拭ふことより年用意 西海 原田 覺

★今朝の春テトラポットに波遊ぶ 平戸 本川 誠 

★歩道橋手すりに残る余寒かな 佐世保 松山茂則 

★白梅やまだ百歳と媼の歩 諫早 安浪加余子 

★蒟蒻のブルルン揺れし針供養 長崎 成瀬至楽 

★姿見に猫背を正す寒の明け 西海 楠本良子 

★鳶舞ふや海へなだるる水仙花 雲仙 草野悠紀子 

★潮の香や枇杷の花咲く屋敷跡 大村 平松文明 

★年酒受く米寿祝ひと子の手より 島原 佐藤美保子 

★楠大樹枝は春日を奪ひ合ふ 長与 竹馬亮二 

★過去形の話もちきり女正月 島原 柴田ちぐさ 

★亡き母の部屋たたへ咲く福寿草 雲仙 西田豊子

【選者吟】帰郷者も坐し過疎郷の厄払


◎歌壇 馬場昭徳選

★マーカーの数値上がれど異常なく蛍を探すPET-CT(ペット)を試す 長崎 高西芳弥

 (評より)「 ペット」とはがん発見のための装置。放射線に照らされたがん細胞を蛍と比喩した。

★運転は上手くなけれど押しゆけり診察に向かう夫の車いす 五島 都々木邦子

★風化して途切れる記憶虫喰いの画像のなかの歪む自画像 長崎 志方雅一

★ドロボウをドボローと言うおさな孫にド・ロ・ボ・ウと二回言わせり 諫早 平松 茂

★なんとまあ人はつまずく生き物か足でつまずき口でつまずく 島原 星野裕美子

★少しだけ自分を褒める出来事に枠をはみ出すほど書く日記 長崎 渡辺英子 

★老犬の薄く濁った目の奥に父母に飼われた日々を見つける 長崎 中小路和久 

★朝五時に耳を澄ませば雨の音能登半島は雪とのニュー ス 五島 鳩山義勝 

★残照の厳しさ寂しさ共にせり逝きたる夫と残りし我れと 佐々 敦賀節子

★シクラメン一鉢ありて冬を越す我れに寄り添い同じ息して 長崎 川添和子

★「もういいよ」かくれんぼして亡き子らに捕まりたいよ連れて行ってと 島原 北浦ひとみ 

★人の世の無常や悲喜は思えども元日よりの大地震とは 諫早 野田明美

【選者詠】人住まずなりたる能登の家々に雪降り積みて夕暮れとなる


◎柳壇 瀬戸波紋選 題「設計」

★マイホーム家族総出で設計図 長崎 川添和子

★マイホーム夢を詰め込む設計図 諫早 畑中朋子

★棟梁の頭の中に設計図 長崎 池山耕治

★人生の設計壊す震度七 長崎 三瀬則子

★新築の図面を前に個々の夢 諫早 江口正昭

★設計図活かされている主婦の知恵 南島原 金子リキエ

★設計図親の部屋まで視野に入れ 佐々 法本安子

★設計と合わなくなった子沢山 諫早 久岡郁雄


◎グループ作品、他。(以下はページをあらためてまた投稿します)
◎一面「きょうの一句」
◎「短歌(うた)ありて」

★前に座す引目鉤鼻色じろの若き男は蹴鞠上手いか 黒田邦子
★入り来たるカニ一匹に声かくる「美容室です。お帰り下さい」 中村清美
◎「あわい」欄
内容はあとで、読みやすいように活字にして投稿します。