2/17西日本新聞「ながさき読者文芸」

◎俳句 籏先四十三選

★春隣旅の誘ひの便り受け 佐世保 馬場定水

 【評より】久しぶりの仲間との顔合わせ、こころが弾む。 

★正月や小船のような靴並ぶ 南島原 松浦せつこ

 【評より】小さな靴が整然と並んでいたのを小船と捉えたのが面白い。

★襟足をすべる剃刀春の雷 佐世保 森 誠

★雪しまく沖田畷の古戦場 諫早 田中道信

★春浅し帰還叶はぬ地震の民 諫早 篠崎清明

★千年を経し如来像日脚伸ぶ 佐世保 相川正敏

★人は皆身内と思ふほり炬燵 雲仙 木村キワ

★しんがりはいつもばあちやん梅日和 佐世保 太田恵子

★春めくや米研ぐ水のやはらぎて 佐世保 松永愛子

★鉈研ぎて試し切りなど山始 長崎 成瀬至楽

★咲く意志の小さく膨らむ冬薔薇 佐世保 小山雅義

★おはやうと白息の子ら畦をゆく 対馬 神宮斉之

★現し世の憂ひ重ねて着ぶくれる 佐世保 牛飼水鳥

★赤い糸むすばれぬまま梅ひらく 諫早 石田志帆

★寒晴や鳶ゆつたりと羽広ぐ 佐世保 宮本由美子

★大寒や犬乗せ押せり乳母車 佐世保 村上美佐子

★小さな手に息ふきかけて雪うさぎ 諫早 碇 タキエ

★初夢や青き地球に輪飾りす 佐世保 渡久地弘子


◎歌壇 黒田邦子選

★新しき炊飯器なるを買い求め夫が取り組む炊きこみご飯 佐世保 松崎伸苑

 【評より】ご主人の奮闘ぶりが頼もしい。 

★ビギナーの竿に釣られし大鯛は不覚のまなこ見開きており 諫早 平松 茂 

 【評より】釣り初心者の作者が大鯛を釣りあげた。大鯛の「不覚のまなこ」。

★五十音〈わ〉の字の裏に〈わに〉の絵を描きし積み木ひき出しの奥 壱岐 町田典子

 【評】引き出しの奥の積み木に遠い子育ての頃を思い出す作者。

★九十歳で逝きにし祖父の遺したる漢和辞典にあふるる付箋 諫早 花岡壽子

★卒寿にて逝きたる母のちゃんちゃんこ妻が繕ふ今日一葉忌 佐世保 小山雅義

★旗を振り駅伝応援がんばって夫が走ったあの日々思い 佐世保 中川保代

★背伸びしてモミジの手から募金箱に繋ぐやさしさエールよ届け 佐々 法本安子


◎諧句 松下冨士子選

★受験生おみくじ開きVサイン 南島原 板山良継

★白寿まで後一年と精を出す 西海 峯山 勇

★満面の笑み初雪をつまむ孫 松浦 松浦靖子

★今日よりも更にジャンプのバネ磨く 松浦 皆川源太郎

★長生きも子供に気兼ね良し悪し 壱岐 加藤博子

★厳寒に耐え裸木の春芽吹く 壱岐 深見秀子

★歯の治療手に汗握る器械音 佐世保 松崎伸苑

★さり気なく若い時代の服を着る 諫早 松原静枝

★呼吸する限りの学び未だ米寿 対馬 神宮斉之