2/16山梨新報「しんぽう文芸」。山梨の句友、田辺義樹さん報。

 ※今回は順調に配達されたようです。

◎俳壇 山田省吾選

★鬼の面笑顔につけて福は内 甲府 伊藤隆雄

 【評より】家族が揃っての節分の豆撒き。鬼の面を見ると怖がる子供が多いが、この子は鬼の面を付けながらも笑顔を見せている。一家の明るい楽しい節分の夜だ。

★晴れ渡る空へ矢を射る年男 富士吉田 青柳時子

 ※こういう行事が山梨県にあるのかも、です。

★だるま売り盆地に春を告げにけり 甲府 村松幸治

★コンサート帰りの窓に雪の富士 笛吹 石倉絹子

★糶市の寒鰤碧く反り返る 富士吉田 鈴木眞人

★一泊の梅見の旅へ子の誘ふ 富士吉田 小林祥子

★寄鍋や曇る眼鏡の顔と顔 大月 志村忠義

★寒梅やほのかに香る散歩道 甲府 堀江妙子

★梅一輪瓶に挿したる香りかな 大月 小俣義人

★寒風や脇目も振らず急く家路 市川三郷 立川亮子

★寒明けや大路新たな光あり 甲府 中村 彰

★綾杉の垣に残り香春めきぬ 甲斐 松田健嗣

★一輪の紅梅見つむ幼き眼 甲州 水上優子

★雨上がり盆地の朝や梅二輪 甲府 古沢なつき

★庭先に立ちて目に入る福寿草 甲府 加勢昭子

★真直ぐに耕す母の鍬さばき埼玉 伊藤一男

★鐘冴ゆる堂の百畳じつと座す 上野原 宮野 始

★春まだき飛行機雲の顕なり 中央 志田末男

★ランドセルきびきびありく寒の入 市川三郷 一瀬利彦


◎柳壇 坂田よし江選

★自信あり微動もしない受け答 甲州 鶴田甲敬

★寒い日々逆に絆は温かった 山梨 松下時子

 ※回想の句ですが、今の能登半島のことも頭に浮かびます。

★ヘルパーが家族の様に思える日 甲府 小沢春美

★介助付き昼間のゆず湯心地良し 中央 鈴木節子

★日航の見事な連携客助け 中央 志田末男

★いつ見ても遺影の夫は笑い顔 甲府 三科恵美子

★補聴器を替えても本音聞こえない 群馬 高橋 空

★畑仕事冬は懸命土作り 大月 市川貞治

★SLの汽笛と煙町興し 埼玉 伊藤一男

★また載った友に負けじと筆をとる 甲府 田中甲子男

★走っても園児の足に追いつけず 山梨 宮本富子

★墓参りいつでも庭の花供え 甲府 米山八重子

★呑みこんだ言葉に胃袋が騒ぐ 笛吹 金丸典男

★吊るし柿薄化粧して旅仕度 大月 和田一成

★ブギウギに楽しくなってリズムとる 甲府 小尾康弘


◎歌壇 祢津達子選

★レコードに針を落とせば甦(かえ)る日々雑音あるも心地良き時 富士吉田 田辺義樹

★冷蔵庫に妻の作った橙のきわだちている柚子ジャムの壜 中央 前田良一

★せせらぎの音は彼の日の子守歌寂れた宿のお酒の肴 富士吉田 樹 俊平

★気概もつ女傑は母校の大先輩にじむ優しさ励まし上手 甲斐 松田健嗣

★ふつふつと大根煮てる台所リッチな一時私のお城 甲府 丸山洋子

★通い慣れた駅までの道少しづつ遠くなったよな思いの在りし 甲州 秋野正彰

★細い指絶えず動かす嬰児よその掌の中に大きな明日 甲州 山下栄子

★極寒に睨み増したる仁王像 吾ら真向かう凄みに負けず 中央 志田末男

★切り取りし桃の小枝の節々に蕾膨らむ春近き畑 笛吹 石倉絹子

★雨あがりホツホツ咲いた梅の花澄んだ青空ひとすじの香 甲府 長田由美子

★団欒を奪い取った能登地震正月の酒控えし夕餉 富士吉田 中村 蓮

★暖冬と云われど寒さ厳しくてマフラー・コート帽子にブーツ 富士河口湖 堀内智美

★囀りをたどりて見あぐ幹の上何か啄む二羽の山雀 大月 沢登かほる

★盆栽の梅の細枝(え)に白い花一輪とても何か香し 甲府 小林豊子

★河原では石叩きして空に舞う木末(こぬれ)縁なき背黒鶺鴒 甲府 小林 衛

★元日に能登を襲いし大地震荒ぶるなかれ今年の龍よ 甲府 高瀬孝人

★見守れる学童らからの「おはよう」の元気な声に未來を託す 甲府 中澤栄使

★一心に小箱を造りの連日を楽しと微笑む夫健やか 埼玉 所 富了

★喜寿近き同級会で物故者の多きに驚く黙祷の前 笛吹 伊藤 清

★睡られず朝を迎える日続き深夜放送のラジオが友に 中央 鈴木節子

★コロナ禍は非日常をも奪い取りすっかり萎えしイタリア旅行 富士吉田 武田妙春

★名を呼びてお久しぶりと笑む友と井戸端会議スーパー出口 市川三郷 立川亮子