★あどけない顔に尚更哀しみが戦禍のガザの子等の姿に 富士吉田 田辺義樹
★水の面にみな北を向く野鴨等をシーソーのよに揺らす細波 甲府 櫻井 稔
★生まれ来て二年たらずの児の好みゴリラはキライ電車大すき 甲州 山下栄子
★背を丸め歩く媼は誰もかもわが母に似て見ゆる寒の日 甲府 高瀬孝人
★雪降るとの予報外すも昼食のおでんコトコト煮えてる厨 甲府 遠藤 俊子
★お気楽な文芸欄への投稿もボケの防止にイイと先輩 甲斐 松田健嗣
★新年の家族揃っての墓参り父さん母さん見守ってねと 甲斐 大木春子
★初雪との予報外れて雨となる書を読み籠もる今日は大寒 中央 前田良一
★菜の花の軽やかな黄蝶のごとハミングしつつ畑の草取る 甲府 津田幸子
★我が道を一筋に生き来たりしも病い癒えたら妻に尽くそう 神奈川 望月真佐夫
★真っ白な雲流れゆく冬空に凧あげをする父と娘が 甲府 原田 要
★ゆっくりと歩いてくれと妻の云う腰の曲がりてつい早くなり 甲州 秋正彰
★若き日に各駅停車で行った能登羽咋穴水珠洲輪島 埼玉 伊藤一男
★宮中の歌会始の放映を気持ちをただし正座して聴く 埼玉 所 富子
★病める吾を気づかい電話呉れる友会えば喧嘩している仲でも 甲府 遠藤武文
◎俳壇 山田省吾選
★工房に甲州達磨冬日濃し 笛吹 石原正則
★侘助の庭に密かや茶の師逝く 富士吉田 小林祥子
★再開の夫婦の散歩春近し 甲府 中村 彰
★夕映えや枯木も塔も影一つ 甲斐 松田健嗣
★鬼は外傘寿を迎へ声高く 富士河口湖 堀内智美
★寒風や買い物袋握りしむ 甲府 堀江妙子
◎柳壇 坂田よし江選
【評】悪なく卒寿を越えた今、大勢の人に支えられた日々に感謝。
★病んで知る働ける日の有難さ 富士川 依田正男
★大家族手抜きで育ち今元気 甲府 遠藤武文
★”載ってたね”友の電話で又奮起 中央 鶴田和彦
★まだ女髪も整えデイの朝 甲府 風間なごみ
★八十半ば初のネイルにゆるむ頬 東京 久宗明子
★小さくも家の財産護る錠 市川三郷 前嶋清栄
★今年また龍頭蛇尾の節料理 甲斐 松田健嗣
★目覚ましに布団の温み後ろ髪 富士吉田 三浦てる子
★天災に人災続く年始め 笛吹 岩井 衛
★福寿草咲いて思わず妻を呼び 富士吉田 田辺義樹