2/9山梨新報「しんぽう文芸」。山梨の句友、田辺義樹さん報。

◎歌壇 祢津達子選

★午後の四時孫と手つなぐ影法師背中に夕陽のっぽの二人 甲斐 長坂加奈子

★あどけない顔に尚更哀しみが戦禍のガザの子等の姿に 富士吉田 田辺義樹

★水の面にみな北を向く野鴨等をシーソーのよに揺らす細波 甲府 櫻井 稔

★生まれ来て二年たらずの児の好みゴリラはキライ電車大すき 甲州 山下栄子

★背を丸め歩く媼は誰もかもわが母に似て見ゆる寒の日 甲府 高瀬孝人

★孫たちに好きなだけお食べとドンと出すイクラ山盛り正月の膳 甲斐 江口靖子

★雪降るとの予報外すも昼食のおでんコトコト煮えてる厨 甲府 遠藤 俊子

★お気楽な文芸欄への投稿もボケの防止にイイと先輩 甲斐 松田健嗣

★新年の家族揃っての墓参り父さん母さん見守ってねと 甲斐 大木春子

★初雪との予報外れて雨となる書を読み籠もる今日は大寒 中央 前田良一

★菜の花の軽やかな黄蝶のごとハミングしつつ畑の草取る 甲府 津田幸子

★我が道を一筋に生き来たりしも病い癒えたら妻に尽くそう 神奈川 望月真佐夫

★真っ白な雲流れゆく冬空に凧あげをする父と娘が 甲府 原田 要

★ゆっくりと歩いてくれと妻の云う腰の曲がりてつい早くなり 甲州 秋正彰 

★若き日に各駅停車で行った能登羽咋穴水珠洲輪島 埼玉 伊藤一男

★宮中の歌会始の放映を気持ちをただし正座して聴く 埼玉 所 富子

★病める吾を気づかい電話呉れる友会えば喧嘩している仲でも 甲府 遠藤武文 


◎俳壇 山田省吾選

★急峻の鎖凍てつく岩場かな 中央 志田末男

★工房に甲州達磨冬日濃し 笛吹 石原正則

※400年の伝統を持つ甲州達磨。武田信玄がモチーフで、顔面の彫りが深く、鼻が高いのが特徴。 目玉を下まぶた寄りに書かれているので、神棚に置いた時に拝む人と目が合うように見えることから「下見だるま」とも呼ばれる。

★侘助の庭に密かや茶の師逝く 富士吉田 小林祥子

★冬の富士記念に写真アジア人 富士河口湖 渡邊康久

★再開の夫婦の散歩春近し 甲府 中村 彰

★夕映えや枯木も塔も影一つ 甲斐 松田健嗣

★鬼は外傘寿を迎へ声高く 富士河口湖 堀内智美

★寒風や買い物袋握りしむ 甲府 堀江妙子


◎柳壇 坂田よし江選

★改めて自分の歳に感謝する 市川三郷 一瀬文男            

 【評】悪なく卒寿を越えた今、大勢の人に支えられた日々に感謝。

★病んで知る働ける日の有難さ 富士川 依田正男

★大家族手抜きで育ち今元気 甲府 遠藤武文

★”載ってたね”友の電話で又奮起 中央 鶴田和彦 

★まだ女髪も整えデイの朝 甲府 風間なごみ

★長生きを念じて植える柚子の苗 大月 鈴木民生

★八十半ば初のネイルにゆるむ頬 東京 久宗明子

★小さくも家の財産護る錠 市川三郷 前嶋清栄

★今年また龍頭蛇尾の節料理 甲斐 松田健嗣

★目覚ましに布団の温み後ろ髪 富士吉田 三浦てる子

★天災に人災続く年始め 笛吹 岩井 衛

★福寿草咲いて思わず妻を呼び 富士吉田 田辺義樹