第43回長崎新聞「ジュニア俳壇・歌壇年間賞」。

長崎新聞、ジュニア俳壇・歌壇年間賞が、2/12長崎新聞紙上に発表されていました。

ジュニア俳壇・歌壇年間賞は、2023年1月から12月まで掲載された全作品の中から選ばれた計10作品。(学年は掲載当時の学年)。

◎俳句 江良修選

★テスト後の雲一つない夏の空 長崎日大高1年 山道幹太

 〜(選評より)試験がうまくいった喜びと達成感を日本晴れの空で表現。晴れやかな笑顔が見える。


★手袋に手を通す今日受検の日 平戸市立中部中3年 赤木未羽

 〜(選評より)受検日の緊張感とそれ以上のやる気を、手袋に手を通すという姿勢で表現。緊迫した空気が感じられる。


★下駄箱に春待つような白い靴 長崎市立深堀中3年 馬場爽音

 〜(選評より)真新しい白い靴で新入生の初々しさを表現。先輩としての作者の優しいまなざしがある。


★雨蛙一人もいない映画館 新上五島町立魚目中3年 川口拓夢

 〜(選評より)町のひっそりした空気感を一人もいない映画館で表現。アマガエルとの取り合わせが絶妙で、鳴き声が寂しさを募らせる。センスが光る。


★吹く風や徐々に離れる鰯雲 向陽高1年 川口温人

 〜(選評より)いわし雲の緻密な観察から、時の流れによる人間関係の変化を示唆。メッセージ性のある句。


※最後まで競った他の5句にひと言添え敬意を表したい。

★母の日にリレー一着プレゼント(寺田優衣)

 〜素晴らしいプレゼント。仲の良い母子関係を感じさせる。

★サイダーを飲み干し挑む問題集(松山葵) 

 〜炭酸飲料の切れ味が意気込みを感じさせる。

★グローブのすき間から見る夏の空(津田晃二朗)

 〜外野の守備か。打球が飛んでくる夏の空の青さが印象的。

★枯れ葉道パリザクパリリ音遊び(松尾咲和)

 〜オノマトペがユニーク。気持ちよく響いてくる句。

★使われぬ棚田に伸びる葛の花(寺崎春正)

 〜強い繁殖力を持つクスの花が故郷の原風景を奪っていく寂しさを感じさせる。


いずれの句も年代にあった等身大の句で、好感が持てる良い句。


◎短歌 杉山幸子選

★あの丘で初めて会った私達覚えていますか約束したこと 佐世保市立江迎中3年 黒木美緒

 〜(選評より)ニ人の姿が見えるよう。約束が読み手に想像の余白を与え、広がりのある作品。黒木さんは日々の景色に詩心を含ませ、毎回心引かれる短歌を寄せてくれました。


★ぷかぷかと浮かぶクラゲになれたらと課題の山から現実逃避 平戸市立中部中2年 村田 慈

 〜(選評より)現実逃避の思いをクラゲに例えたところが独特。クラゲの姿、動きから気持ちがよく伝わる。対象をよく見つめ、思いをそれに託し、なるほどと思いました。


★疲れたなぼくという店今日閉店目というシャッターだんだん閉じる 佐世保市立東明中1年 廣瀬寛太

 〜(選評より)自分を店に例え、疲れ切ったことを「閉店」、目が閉じていくさまをシャッターが閉じるとは、なんと独創的な表現か。気持ちが視覚的によく伝わる作品となりました。


★将来の不安の消えない毎日を忘れたフリしてスマホを触る 佐世保市立日野中2年 冨田彩貴

 〜(選評より)日常生活の自分の姿の中、己を見つめ、思いを見つけて表現。冨田さんは毎回、繊細な思いを日々の行動に託し表現した作品を寄せてくれ、そ の思いに胸がぎゅっとなることも多くありました。


★ローファーがすれて色落ちでも使う後一年の私の相方 松浦高2年 藤崎茉帆

 〜(選評より)自分と共に時間を過ごしてきたローファーを相方と呼び、これからも一緒にと詠う。素晴らしい高校生活の日々、歩んでいく未来への道が見えるようです。


※選歌の中、心に残った作品をいくつか。

★早朝に飛行機雲が会いにきた線が私の心をえがく(落水奏)

★映画館君と眺めるキャスト欄倍速再生?ながれよとまれ(大木由絆)

★春の音(ね)の桜散る日のある朝に翼を広げぼくははばたく(下田里希)

★一人のむラムネのビー玉じゃまをするもう夕暮れか減らないラムネ(豊嶋康眞)